「きのう何食べた?」に共感し、感動する理由とは?原作からさらに踏み込んだドラマならではの秀逸な演出
シロさんとケンジ、シロさんの両親との関係性にももう一歩踏み込む
第3話で友人のゲイカップル、小日向さん(山本耕史)と航くん(磯村勇斗)の家でのハロウィンパーティに招かれた際、出かける前にケンジにねだられて、「人間、何事も慣れだな」とぼやきつつ、ケンジとおそろいの結婚指輪をちゃんとはめるシーンにもシロさんの成長が見られる。
その数日後、シロさんが両親と永代供養の屋内墓地の見学に行った夜、家で自由な一人メシを堪能したケンジは、「俺、シロさんのご両親とは、もうニ度と食事することもないんだろうなぁ」としんみり。ちょうどそこへ、両親からケンジへの贈り物であるイチゴと共に帰宅したシロさんとのやり取りが印象的だった。
初物のツヤツヤのイチゴを泣きそうな表情で見つめるケンジに、「別にそんなんで、うちの親のこと、許さなくていいぞ。おまえに家に来るなって言ったの、撤回したわけじゃない」と言うシロさん。ここまでは原作通りだが、ドラマ版ではシロさんが続けて、「うちの親は…。いや、そうさせている俺も含めて、やっぱり、おまえにひどいことしてると思う」と声を震わせるのだ。そんなシロさんに、ケンジは「家族だからとか、息子の恋人だからとかで、会いたくないのに、無理に会う必要なんかないよ。会いたい時には、会える。それが幸せなんじゃない?」と優しく微笑む。シロさんは、家族の行動がケンジを傷つけていることをちゃんとわかっていて、申し訳ないと思ってくれている。それだけで、ケンジの気持ちがどれだけ救われたことだろう。
この、ちょっとシリアスな空気のシーンのあと、シロさんの両親が、もしよかったら追加料金を払って、将来、シロさんもケンジも一緒の墓に入らないか?と提案したことが明かされるという意表を突くオチがある。それを聞いたケンジがハイテンションになる様子に笑いながらも、なんだかんだ言って、ケンジを息子のパートナー=家族と認めているとしか思えない、シロさんの両親、特にお母さん(梶芽衣子)のケンジに対する心境の変化にもしみじみする。