吉岡里帆が『怪物の木こり』から感じた、時代へのメッセージ「人が人を簡単に決めつけてはいけない」
第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した倉井眉介による小説を映画化した 『怪物の木こり』(公開中)。絵本「怪物の木こり」の仮面を被った何者かが「脳を奪う」という猟奇的な連続殺人事件を発端に、サイコパスと連続殺人鬼、天才プロファイラーが追って追われる異色のサスペンス映画だ。鬼才、三池崇史がメガホンをとり、亀梨和也が主演を務める本作で、サイコパスに翻弄される女性、荷見映美を吉岡里帆が演じる。
「登場人物全員を“サイコパス”としているおもしろさは、人間の多面性を描くところにあると思います」
亀梨演じる主人公は、目的のためなら他者の命を奪うこともいとわない冷酷なサイコパス弁護士、二宮彰。吉岡が扮する映美は、父親の不審死にふさぎ込む二宮の婚約者である。父親が決めた政略結婚の相手同士、どこか表面的な2人だが、映美が二宮に抱く感情は少しずつ変化していく。実に細やかな芝居が求められる役どころだ。そして吉岡の言葉を借りれば、映美は本作における唯一の「善良な市民」。一方で本作は、「全員サイコパス」と銘打っている。そこで吉岡は、映美の多面性に目を付け、表現した。
「登場人物全員を“サイコパス”としているところのおもしろさは、“人って、ひと言では片付けられないよね”という、人間の多面性を描くところにあると思うんです。じゃあ、映美のサイコパスな要素はどこだろう?と考えた時、やっぱり“表面上ではわからない”というところなんじゃないかと。だからこそ、映美を演じるうえでは、一見正常で、ピュアで、いい人に見えるようにということを一番大事にしました」。
クランクインはなんとクライマックスのアクションシーン。そのことについて、「本当は、順番に撮れたらいいんですけどね」と笑った。壮絶なシーンから現場に入ることになった吉岡だが、からっとこう振り返る。
「でも、“三池さんの現場”をすぐに細胞が感じ取れたのでよかったと思います。“そうだ!三池組に来たんだ!”って、目が覚める感じがありました。三池組は、とにかく感情を振り切って、開いていける現場ですね。そして人の怖さや、人のおぞましさみたいなものをちゃんと含んでいる。作品は、バイオレンスシーンやアクションシーンも見どころなので、そういう世界の住人として、ふさわしい状態でいなければと思います。あんまり生ぬるい感覚ではいられないですね」。