大谷翔平に密着した監督が明かす、ドキュメンタリー映画の舞台裏。最も驚いたのは「彼が本当に“普通”であること」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
大谷翔平に密着した監督が明かす、ドキュメンタリー映画の舞台裏。最も驚いたのは「彼が本当に“普通”であること」

インタビュー

大谷翔平に密着した監督が明かす、ドキュメンタリー映画の舞台裏。最も驚いたのは「彼が本当に“普通”であること」

メジャーリーグで2度目の満票選出によるMVPという、またもや前人未到の大記録を打ち立てた“二刀流”大谷翔平選手。いまや全世界の人々を魅了してやまない大谷選手に密着したドキュメンタリー映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』が、ディズニープラスで独占配信中だ。このたび本作を手掛けた時川徹監督に単独インタビューを実施し、撮影の舞台裏から、長期にわたる取材から感じた、大谷選手の底しれぬ魅力をひも解いてもらった。

大谷翔平選手に密着したドキュメンタリー映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』
大谷翔平選手に密着したドキュメンタリー映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』[c]Rivertime Entertainment Inc. TM/[c]2023 MLB

※本記事は、本編の核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「大谷選手の一人の人間としての物語を撮りたいと思いました」

二刀流選手として、数々のメジャーリーグ記録を塗り替え、侍ジャパンの2023年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝にも貢献した大谷選手の活躍は枚挙にいとまがない。時川監督は「大谷選手はただただすごい人です。だからこそ、彼の歩んできた道のり、特にMLBからの足取りを、ここで一旦ちゃんと映像化しておくべきだと思いました」と感じ、本作のメガホンをとったと言う。

時川監督は「彼が残した野球の成績や投げる球種、バッティングフォームなど、データのうんちくを集めるのではなく、大谷選手が一人の人間としてどういう人物なのか、そして彼はこれまでどういうものを乗り越えてきたのかという物語を撮りたいと思いました」と語る。

見ているだけで胸熱なポスタービジュアル
見ているだけで胸熱なポスタービジュアル[c]Rivertime Entertainment Inc. TM/[c]2023 MLB

「ドキュメンタリーのなかで大谷選手自身も『最初から上手くいったことなんて1つもありませんでした』と言っていますが、あのShohei Ohtaniでさえそうなのかと、きっと誰もが思うはずです。本作はもちろん大谷選手のファンが第1のターゲットですが、それだけではなく、人生につまずいたり、失敗して立ち直れないと思ったりしている人など、多くの方に観ていただきたいです。アメリカはどちらかというと、失敗してなんぼみたいなところがありますが、日本だと学校に落ちたらもう人生真っ暗、一度やらかしたら終わり、みたいな考え方の人も多い気がして。だから、たとえ失敗しても負けないで続けていくことで、自分の夢を実現できるということを、大谷選手の姿を見て、感じてもらいたいなと思いました」。

「マルティネズやダルヴィッシュといった先輩たちが地ならしをしてくれていたことは、非常に大きい」

本作では、英語版のナレーションを米野球殿堂入りした元ボストン・レッドソックスのペドロ・マルティネズが、日本語版をニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した松井秀喜が担当している。大谷選手について語る出演者は、この2人をはじめ、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有選手、元ヤンキースのCC・サバシア選手、北海道日本ハムファイターズと侍ジャパン元監督の栗山英樹、元ロサンゼルス・エンゼルス監督のマイク・ソーシアとジョー・マドン、代理人のネズ・バロロらだが、この人選については、大谷選手と話し合って決めたそうだ。

「そうは言っても、事前に僕たちでかなりリサーチをしました。それで、大谷選手が学生時代に書いたものやいろいろな記事を漁ったなかで、『僕の憧れは、打撃だと松井秀喜さん、投手だとダルビッシュさん』という中学時代の記事を見つけたので、これはお2人に出てもらうしかないなと思い、アプローチしました。
また、ペドロ・マルティネズは、ピッチングにおいて大谷選手がずっとモデルにしていたこともありますが、決め手となったのは、2021年のオールスターでした。大谷選手が初出場された際に、MLBの放送で、大谷選手、ペドロ、一平さん(大谷選手の通訳である水原一平)が楽しそうに話しているのを見てすごくいいなと思ったので、今回お願いしました。大谷選手もペドロも地方で育ったし、野球以外のところで、両親の愛をたくさん受けて育った方です。それに彼はドミニカ共和国出身で、母国語も英語ではなくスペイン語であり、海を渡ってMLBに来たという共通点もありましたから」。

そういった言葉の壁や人種差別などの問題については、近年少しずつ改善されてきたようで、大谷選手の口からはまったく語られることはなかったが、それより前の世代であるダルビッシュ選手が渡米したてのころの苦労を振り返って語るシーンは、敢えて挿入したと言う時川監督。


ダルビッシュ有選手、侍ジャパン元監督の栗山英樹などスター選手や名監督が出演
ダルビッシュ有選手、侍ジャパン元監督の栗山英樹などスター選手や名監督が出演[c]Rivertime Entertainment Inc. TM/[c]2023 MLB

「そういう先輩たちが地ならしをしてくれていたことは、非常に大きいと思います。こういうことを言うと、日本であれば『ポリコレだ』(「ポリティカル・コレクトネス」の略)とか文句を言われたりしますが、やはりMLBでマイナーから全部入れた大きな組織の総数で言うと、確かアジア人は非常に少なく、数パーセントしかいないんです。大谷選手やペドロのように、メジャーのビッグリーグで活躍する人たちが目立っているから、もっとたくさんいるように見えてしまいますが、全体の野球人口からしたらほんのひと握りで、そういう環境のなか、彼らが成績を残しているということを、もう少しわかってほしいなとも思いました」。

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