『毒戦2』が持つ“ミッドクエル”としてのおもしろさ。大ヒットリメイク映画がさらにアグレッシブに進化
はまり役を受け継ぐプレッシャー、イメージを覆す変身…俳優たちの飽くなき役作り
ディレクティングについて「前作が持っている強烈でビビッドなイメージを保ちつつ、俳優たちの感情をストーリーに集めることが演出のポイントだった」と話すペク監督。そんな彼とタッグを組んだ役者陣の飽くなき努力も、作品を支えた。実体なき“イ先生”を追跡するウォノ役に引き続き扮したチョ・ジヌンは、「以前着ていた服がどこかにあるだろうと思って探してみた」と、ウォノというキャラを再演するためにビジュアルからプレイバックを試みたことを明かす。
「ウォノに再会できて非常にうれしかった。そして前作で悩んだ部分を、さらにたくさん積み上げていかなければならないという気がした」と話した。 ウォノの“イ先生”への執着は、『毒戦2』で極まり、彼の葛藤もまた強くなっている。ウォノという人間の内的なストーリーは、本作でより深くなっている印象だ。
敬虔なクリスチャンのふりをしながら、人一倍残酷で野心を抱いたブライアンは、『毒戦』でも人気のキャラだ。再び演じるチャ・スンウォンは「前作に登場したキャラクターは、より一層密度の濃い人物になる」と話しながら、新しく登場するキャラクターが有機的にぶつかり、事件が誘発されて『毒戦2』固有のエネルギーが生まれる」と、新旧のキャラがいてこそ豊かなストーリーになったと自信を表わした。
チャ・スンウォンのこの言葉は、人気作の続編に新たに登場する俳優へのエールとなった。“イ先生”の最側近であり組織内の裏切り者や邪魔者を消していくクンカル役のハン・ヒョジュは「ビジュアルも内面も神経を使って準備した、 力の入ったキャラクター。痩せているのに、筋肉がくっきり見えるというシナリオにマッチするため、体脂肪量を下げるためのハードな運動をこなしました」と役作りのビハインドを明かした。
ついに“イ先生”事件の終止符を打とうとするラクことソ・ヨンナク役のオ・スンフンは「キャラクターについてたくさん悩んだ。 ミステリアスだったラクのバックグラウンドが多く語られている」としている。前作に比べて、オ・スンフン演じるラクは、主体的に動き、物語を終わらせる役割として描かれている。受け身だからこそどこか不気味で、悲哀もあったリュ・ジュンヨル版を新しく解釈し、人物の再構築が必要だったはずだ。チョ・ジヌンも別のインタビューで「私よりも、スンフンがたくさん悩んだはず。彼なりに責任感があった」と、労いの言葉を伝えている。やはりオ・スンフンは、リュ・ジュンヨルのラクを受け継いだプレッシャーをかなり感じていたようだ。
ペク監督は『毒戦2』を「自分が信じる目的地に向かって行く人々の話」と説明している。その目的地とは、まずは 「毒戦」シリーズを一貫して貫く「“イ先生”は誰か?」という質問だ。だが登場人物たちにとってはもはや“イ先生”が誰でもよいのかもしれない。“イ先生”への執着が目的であり、ラストでその強烈な感情から解放されていく。
「一つの単語で言えば、“寂しさ”だ。前作のラストからこうして“目的地”に着いた人たちの姿を見て、彼らは果たして満足だったのか?幸せだったのか?寂しいのか?虚脱感を抱いているのか?という質問を投げかけ続けた」と、映画を見終わった瞬間の虚無感こそが本作の余韻だと、ペク監督は語る。『毒戦』という世界観の劇的な終幕を、ぜひとも見届けて欲しい。
文/荒井 南