亀梨和也が三池崇史監督と語り合った、これまでの道のりとこれからの覚悟。「やっぱり映画はやめられない」
「自分がアイドルになるなんて全然思っていませんでした」(亀梨)
――三池監督は、常にバラエティに富んだ作品を世に送りだしています。“バイオレンスの巨匠”とも呼ばれ、本作のような危険な香りのする映画も数多く作られていますが、どのような企画に心を動かされますか。
三池「僕はいつも『なにかを撮っていたい』とは思っていますが、『こういう監督になりたい』『こういう映画を撮りたい』という自分の欲は持たないようにしています。そもそも『監督やれるよね?』と打診されるまで、自分がなれるなんて思っていませんでしたから。『俺が監督?』みたいな感じですよ(笑)」
亀梨「そうなんですか!監督にならなかったとしたら、どのような道に進んでいたんでしょう。とにかく映画には携わっていたかったということですか?」
三池「なんでも仕切れる、スーパー助監督ですね。僕はずっとフリーで助監督をやっていて、当時はあちこちの会社の現場に行っていたんですね。そうするといろいろなところに知り合いができて、『あいつがいると現場がうまく回るよ』と言ってもらえるようにもなったりして。監督がどのようなイメージで撮りたいのかを聞いて、時間と予算に合わせて段取りを組んだりと、現場のサポートをしていくのが、助監督の仕事。助監督としてのプロになれたら十分だったし、チーフ助監督になれた時には『チーフまで来たか』という達成感もあって。そうしているうちに、代打で監督を任されたんです。いつも『こうなりたい』と思っていたわけではなく、『現場がおもしろい』という気持ちが原動力となって、ここまで来ました。現場以外の僕は、かなりのダメ人間です(笑)」
亀梨「あはは!それこそ、『どっちが本当の自分なんだ?』という感じですね」
三池「でも亀梨さんの場合は、ある意志を持って進んできたんじゃない?」
亀梨「芸能事務所に入ってからは、そうですね。それまでは野球選手になりたくて、自分がアイドルになるなんて全然思っていませんでした。もともとのエネルギー源となったのは、『両親のために大きな家を建てたい』という想いだったと思います。子どものころから“おうちコンプレックス”があったので、スターになってお金を稼ぎたいなと。でもこの世界に入って、たくさんの刺激に触れるようになって。先輩が素敵な衣装を着てマイクを持って歌っていると、そのバックにつきながら『こうなりたい』と思ったり、ドラマや映画を観て『お芝居をやってみたい』と思ったり。ドームに立ちたい、月9に出たい、ベストジーニスト賞がほしいなど、10代のころに抱いていた憧れは、ありがたいことに20代前半のうちにいろいろと叶えることができました。僕はそうやっていろんなことに触れてみて、やりたいものを見つけていくタイプなのかなと思っています。事務所で『これからなにをしたい?なにになりたい?』と夢について質問をされたとしても、『なにもない』というのが悩みではありましたが、逆を言えば『これしかやりたくない』というものがないからこそ、バラエティにも出るし、スポーツキャスターもやれば、アイドル、舞台、ドラマ、映画など、いろいろなことに挑戦できたのかなと。そういう機会をいただけた縁や巡り合わせにも、とても感謝しています」
「自我を捨ててなにかに打ち込むうちに、道が開けてくるもの」(三池)
――お2人は、本作で初タッグを組まれました。実際に現場でご一緒してみて、亀梨さんにどのような印象を抱きましたか。
三池「『一つ一つの仕事をとても大事にしているな』という印象を受けました。常に全力でぶつかるんですが、それでいて周囲にプレッシャーを与えない感じがとてもいいなと思って。暑苦しくない(笑)。また佇まいからも、覚悟を感じる人ですよね。言い訳をしないし、なにがあってもうろたえないような感じがある。自分が過ごしてきた時間を否定せずに、受け入れようとしている。そういった覚悟があると、自信につながりますよね。先ほど夢がないのが悩みだったという話がありましたが、人間って、目の前のことに夢中になっているうちにあっという間に時間が過ぎて、気づくと違う場所に立っているもの。自我を捨ててなにかに打ち込むうちに、道が開けてくるものなのかなと思っています」
――無我夢中になっているうちに、その姿を見て、自分のことを信じてくれる人が出てきたり、次のステージへと導いてくれる人が出てきたりするようにも感じます。
三池「そういうものですよね。助監督というのは、たとえば女優さんが交代することになったとしたら『その人に合う赤いパンプスを急いで探さなきゃ!』と、パンプスを探すことに必死になるような仕事なんですよ(笑)。なぜ俺は赤いパンプスを探しているんだ…と考える意味も時間もないような感じで。そういうことの積み重ねでした」
亀梨「一生懸命にパンプスを探しているうちに、きっとまたいろいろな人と出会ったりするものですよね。パンプスを探すためにこの人に話しかけた、という出会いもあったりする。そこからつながる縁もあるだろうし、縁って本当におもしろいものだなと思います」
――それぞれがひたむきに打ち込むことで、チーム全体の熱気につながることもあると思います。本作の現場の雰囲気はいかがでしたか?
亀梨「本当にエネルギーのあるチームでした。監督とはクランクイン前から役作りについてたくさんお話しさせてもらいましたし、現場に入ってからも俳優部としてやるべきことに集中ができるような環境でした。アクションについても、監督がご自身で動いて見せてくれたり、各部署の方々が『これはどうでしょう』『ああやってみたらどうだろう』と監督に自分の考えをプレゼンしたりと、熱量の高さを常に肌で感じていました。僕もこの作品のために費やしている時間がものすごく心地よかったです」