「おしん」「渡鬼」泉ピン子が英国の伝説女優に重ねた生き様「長くドラマを続けていくというのは大変なこと」
「トニーはホントに良き友人。あのキャラクターはとてもいいですね」
しかし、世間の声にプロデューサーたちが耳を傾けることもなく、ノリーは番組を降板され物語は進んでいく。その後、デビュー当時ミュージカル女優を目指していた彼女にとって原点である舞台に戻り、傑作ミュージカル「ジプシー」のステージにも立つが、目指していたウエスト・エンド(英国のブロードウェイ)には行けず、ほかの舞台のオーディションにも参加。そこには自分よりも年若い女優たちが、少しノリーを見下したように目を向けながら「どうしてドラマを辞めたのか」と聞いてくるなど、ノリーは60歳を過ぎてからの挫折も味わうことになる。ただ、そんな彼女に寄り添う親友や理解者がいる。
ノリーは生涯独身であったことでも知られているが、「クロスローズ」の共演者である年下の俳優、トニー(オーガスタス・プリュー)、コメディアンのラリー(マーク・ゲイティス)といった男友だちがおり、悩む彼女を支え助言を与えたりもする。泉はそうした親友たちの存在も見どころだと話す。
「最初、トニーはただの運転手なのかと思っていたらドラマの共演俳優だったんですね。彼女のアパートメントの真向かいの部屋に住んでいて、窓越しにやり取りしたり、呼ぶとすぐに駆け付けたり、落ち込んでいたら励ましてくれたり。ホントに良き友人。あのキャラクターはとてもいいですね。アパートのロケーションもおもしろくて、よく探してきたなと思いました(笑)」。
「古き良き時代のノリーの姿と多くの先輩方の姿が重なり、懐かしくなりました」
ノリーが降板すると番組の人気も急降下。ノリーは行く先々で、「なぜ辞めたのか」と訊ねられては「わからない」と答えるシーンが何度も差し込まれる。そして視聴者からテレビ局への非難の電話や投書が殺到するシーンも映しだされるなど、ノリーの女優としての運命は一体どうなるのか?と最後まで目が離せない展開が続いていく。
本作は80年代という時代設定で、レトロなファッションやインテリアなども見どころとなっている。そんななか、赤い髪の毛に大きなサングラスと毛皮のコート、そして愛車のロールス・ロイスに乗って登場するいかにも大物女優なノリー。一方で、一人暮らしの家で静かに暮らすつつましやかなノリーの日常も描かれる。その対照的な姿も魅力的で、泉も楽しんだそうだ。
「ノリーが毛皮のコートをフワッと羽織る。あの瞬間、『私は女優よ』というか、ノリーにとって毛皮のコートが大物女優の象徴なんでしょうね。このような大女優って、昔はたくさんいらっしゃいましたね。劇中のノリーは60代前半なんですか?ノリーは日本で言えば森光子さんのような方だったのではないでしょうか。あるいは、山岡久乃さんもノリーのイメージと重なりました。そう言えば、ノリーが家で台本を開いて、セリフを覚えるシーンがあります。あれを見ていて、自分のことを思い出しました。橋田先生の台本は、長ゼリフが多くて覚えるのが大変で。私は自分のセリフを抜き書きして覚えていたんです。それは森さんから教わった方法で、書いたものを持っておくと、何かお守りみたいにもなっていたんですよ(笑)」と懐かしそうに振り返る。
「ノリーは、家に帰ると、一つ一つ部屋のスイッチを付けていく。あれは彼女なりのルーティンワークだったんでしょうね。また、ノリーの意外と質素な日常生活からは杉村春子先生を思い出しました。本当に、この古き良き時代のノリーの姿と多くの先輩方の姿が重なり、懐かしくなりました」。
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■泉ピン子
女優。東京都出身。18歳で歌謡漫談家としてデビュー。1975年よりワイドショー番組「ウィークエンダー」のレポーターで注目を集める。以降、映画やドラマ、舞台などで数多くの作品に出演。代表作に、NHK連続テレビ小説「おしん」、「渡る世間は鬼ばかり」、「おんな太閤記」、朗読劇 泉ピン子の「すぐ死ぬんだから」など。
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