古川琴音が明かす、主演ホラー『みなに幸あれ』での初体験「本当の恐怖でしゃがみ込んでしまった」
日本で唯一のホラージャンルに絞った一般公募フィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」の第1回大賞受賞短編をベースにした、下津優太監督の商業映画監督デビュー作『みなに幸あれ』(1月19日公開)。「呪怨」シリーズや『犬鳴村』(20)から続く“恐怖の村シリーズ” 3部作などの鬼才、清水崇監督が総合プロデュースをした本作でホラー映画初主演を飾ったのは、話題作への出演が相次ぐ古川琴音だ。MOVIE WALKER PRESSでは、ホラーという新たなフィールドに飛び込んだ彼女を直撃!オール福岡県ロケで行われた撮影を振り返ってもらった。
「台本を読んだ時に湧き上がった、気持ちを大切に演じました」
「ホラー映画は好きなので、お話をいただいた時は純粋にうれしかったですね」。そう語る古川が演じた主人公、看護学生である“孫”は、田舎に住む祖父母を久しぶりに訪ねたことから、おぞましい出来事に巻き込まれていく。だが、その恐怖は幽霊や怪物が襲ってくる類のものではなく、彼女も「台本を読んだ時に、フィクションだけど、“犠牲の上に成り立つ幸せ”という本作のテーマにどこか現実とリンクするような怖さを感じて。それは私が観てきたホラー映画とは違う感触のものだったので、新しい挑戦になるし、お客さんにとっても新鮮な映画になるんじゃないかなと思いました」と強調する。
撮影に入る前には、下津監督から「『世界にある不幸の数と幸せの数は同じで、プラマイ0になるようにできている』という都市伝説があって。その考え方をモチーフにして物語を作った」という話も聞き、興味を深めた。本作のもとになった同じタイトルの短編も観て「理解できなかったし、見たくないものを見せられたなという感じでした」と言及するが、その印象には囚われず、今回の“孫”という役柄には普遍的な、ワイドな視点で臨んだという。
「物語を引っ張っていくのはこの“孫”だし、お客さんが共感できる一般的な感覚を持っているのも彼女だけなので、看護学生という設定はあるんですけど、だから“これができるよね”、“こういう考え方をするよね”という詰め方はしていなくて。台本を読んだ時に自然に湧き上がった気持ちを大切に演じようと思っていました」。
劇中では、はじめ普通に会話をしていた祖父母が少しずつ常軌を逸した行動をし始めるが、そこに対しても古川は冷静に「彼女は『おじいちゃん、おばあちゃんにはなにかがあるんだろうな』という意識を持ちながらあの家を訪ねているし、“2階にその答えがある”って薄々気づいてもいる」と述懐。「なので、2人が豚の鳴き真似を始めたり変なことを言いだした時は、心配をしつつも『やっぱり!』という気持ちが強まっていったような気がしていて。最初から“恐怖”を感じているというより、心配と、怪しいという気持ちが入り混じっていくような感覚でした」。
だが、次々と恐ろしいことが起こるのに、祖父母はもちろん、あとから田舎にやってきた両親も何事もなかったかのように普通に振る舞い、“孫”が「みんなおかしいよ!」と言っても誰も意に介しない中盤あたりからは流石に、「演じていても辛かったです」と告白する。
「普段のコミュニケーションでは、自分のアクションになにかしらの反応が返ってくるじゃないですか。でも、あの状況では自分がどれだけ取り乱して『おかしい!』と言ってもなんのリアクションもないから、どんどんフラストレーションが溜まっていったんです」。