古川琴音が明かす、主演ホラー『みなに幸あれ』での初体験「本当の恐怖でしゃがみ込んでしまった」
「本当に怖いと、頭で“怖い”と認識する前に身体が反応することを知りました」
これまでにも濱口竜介監督の『偶然と想像』(21)、清水康彦監督の『スクロール』(23)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(23)などの作品で演技力を示し、観る者を釘づけにしてきた古川だが、本作では“演じる”ということについて新たな発見もあったようだ。
「山奥の伯母の家で、孫が部屋の一角を隠している布を取るシーンがありましたが、監督の演出で、布の奥になにがあるのか事前に知らされていなくて。本番で初めて見たのですが、それが自分の想像の範囲を超えていたんです。本当に怖いと、頭のなかで“怖い”って認識する前に、身体が反応するということを初めて知りました。布を取った瞬間にしゃがみ込んじゃったんです。あの動きや感情は自分でも新鮮でした」。
話を聞けば聞くほど、不条理な村の常識に巻き込まれていった役柄の“孫”と同じように、古川自身も初めてのホラー映画の現場でその洗礼を受けたことが伝わってきたが、そもそもホラー映画がなぜ好きなのか聞いて見ると、「それがよく分からなくて」と複雑な笑みを浮かべる。
「私もだいぶ怖がりなので、それがずっと不思議で。怖がりなのに観てしまうし、なんで好きなのかよく分からないんですよね(笑)」。そう言いながらも、お気に入りの作品を挙げてもらえば、「いろいろ観てきたけれど、パッと浮かぶのはNetflixで配信された台湾ホラーの『呪詛』、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』。もっと以前のものだと、『パラノーマル・アクティビティ』や清水監督が撮られた初期の『呪怨』シリーズが好きでした」という答えがポンポン飛び出してくるから、なかなかの怖いもの好きだ。
けれど、本作のタイトルにちなんで、「幸せを感じるのはどんな時?」と尋ねると、「やっぱり美味しいものを食べている時ですね(笑)」と少女のような屈託のない笑顔に。そんな彼女が『みなに幸あれ』でどんな悪夢を見ることになるのか。未曾有の恐怖と衝撃を見逃すべからず!
取材・文/イソガイマサト