山田涼介と浜辺美波が語る、難役へのアプローチ方法「山田さんは頑張ってキラキラを消していました」
「内田監督にすべてを委ねて受け入れようと思っていたので、すべてが新鮮でした」(浜辺)
――現場にはラブストーリーを撮っているという空気も流れていたんですか?
山田「内田監督は、ラブストーリーを撮っているテンションで話してこなくて。どちらかと言うと、『この光が2人を照らしているから、こういう気持ちになって』と言われることが多かったですね」
浜辺「そうそうそう。そうかもしれない(笑)」
山田「『ここがキュンキュンポイントだから、よろしく!』みたいなのはないよね?」
浜辺「“キュンキュン”というワードは聞いてないかも(笑)」
山田「言わないし、多分監督は“キュンキュン”なんて知らないよ(笑)」
浜辺「確かに、知らないかもしれません(笑)。私はいつもと違って、あえて内田監督のことや過去作の下調べをせずに、フラットな状態で現場に入って、監督にすべてを委ねて、言われたことを受け入れてやろうと思っていたので、すべてが新鮮でした。『台本があるようでないような、こんな感じなんだ』という発見もあって。どんな作品になるのかもわからなかったので、そこもおもしろかったです」
――過去のインタビューを読むと、内田監督は結構アドリブを入れたり、役者が覚えてきたことをそのまま使わずに、現場で芝居を変えることもあるみたいですね。
山田「意地悪ですね(笑)」
――その人の内側から出てくるものを見たくて、そういう演出をするらしいんですが。
山田「今回の現場でも、言葉が合っているかわからないけれど、とあるシーンで浜辺さんが追い込まれてしまった瞬間がありましたね。僕から見たら全然OKなお芝居だったんですけど、監督がなかなかOKを出さなくて」
浜辺「美夏が衝撃的な行動をとる撮影の時のことですが、あそこにいたる彼女の精神的心理がなかなかつかめなくて」
山田「監督が言いたいこともわかるけれど、浜辺さんには浜辺さんのビジョンがあるし、僕はそれがぶつかり合うのは全然悪いことじゃないと思っていて。逆に、それができるすごくいい現場だなって思いながら、達観してました(笑)」
浜辺「私も初めて、現場で自分の心の整理をつけるためのお時間をいただいたのですが、それに時間がかかってしまったので、どちらかと言うと、『申しわけないな』という気持ちのほうが強くて。撮影が終了したのが深夜の3時ぐらいだったので、その日の朝6時から別の仕事が入っていた山田さんに迷惑がかかってしまうと思っていました(笑)」
山田「あっ、俺の心配?(笑)」
浜辺「もちろん現場にも迷惑をかけてしまったので、『うわあ、どこから謝ったらいいんだろう?』と思って(笑)」
山田「俺は全然大丈夫でしたよ!」
「内田作品の重厚感と、ラブストーリーに重きを置いたライトな要素を融合させた“いいとこ取り”の作品」(山田)
――山田さんは格闘技のシーンが、浜辺さんも実際にピアノを弾くシーンがありましたが、かなり練習されたのでしょうか。
山田「そんなに長い期間ではないけれど、僕はMMA(総合格闘技)の先生のところに通いました。殺陣(たて)とかはやったことがあるし、身体が利くほうだとは思うんですよ。でも、格闘技はやったことがなかったので、決められた動きだけを必死に練習しました。難しかったですね。でも、僕より浜辺さんのピアノのほうが絶対に大変だったと思うな」
浜辺「いやいや(笑)。でも、私も同じように、ピアノの先生のところに通いました。同じ日にだいたい練習に来ていた(美夏が通う音楽大学の非常勤講師である北村悠真役の)野村周平さんと競い合うようにお互い頑張って練習をしました。野村さんのほうが曲数が多いので大変だったみたいです。私も中学生の時にフルートはやっていたのですが、ピアノはやったことがなかったので、ピアノを買って家でも練習しました」
――完成した作品をご覧になって、どんな感想を持たれましたか?
浜辺「想像していたものよりも、静かで美しい映像だったので驚きました。あとは、私が美夏になって翻弄されていたものがそのまま映っていたので、渦に揉まれて、頭がぐちゃぐちゃになりました(笑)」
山田「内田監督の作品はわりと重厚感のあるものが多いという印象だったので、撮影に入る前は、そんな監督がラブストーリーを撮ったらどういうものができあがるんだろう?という興味があったんです。そうしたら、内田作品の重厚感とラブストーリーに重きを置いたライトな要素を融合させた“いいとこ取り”の作品になっていて。久石さんの音楽もすばらしいので、僕が勝手に言うのもおこがましいですが、内田監督にとっても新境地の映画になったような気がしました」
取材・文/イソガイマサト