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人気子役から実力派俳優へ!初のロマンス映画『同感〜時が交差する初恋〜』でヨ・ジングが見せた等身大の演技

コラム

人気子役から実力派俳優へ!初のロマンス映画『同感〜時が交差する初恋〜』でヨ・ジングが見せた等身大の演技

スランプや大学進学を経て、新境地を開拓

ただ、過度に絶賛されたことで、もっといい姿を見せようという欲が強くなりすぎて、その後の作品では演技に力が入ってしまい、後から思えばスランプだったと明かしている。それでも、精力的に出演を続けた。大学に進学した2016年には「テバク〜運命の瞬間(とき)」で朝鮮第21代王・英祖を世子時代から好演。このドラマでは当初役柄の把握に手こずっていたところ、先輩俳優からセリフの行間の意味を考えるよう教わり、キャラクターを作り上げることについて多くを学べたというだけあり、英祖の葛藤や複雑な心情表現には感服するしかない。

「王になった男」でヒロインを演じたイ・セヨンとハートポーズ
「王になった男」でヒロインを演じたイ・セヨンとハートポーズ[c]STUDIO DRAGON CORPORATION

20代に入ると、より多彩なジャンルに挑戦し新たな魅力を発揮する。2017年、ドラマでは「サークル:繋がった二つの世界」、「ひと夏の奇跡〜Waiting for you」といったロマンス要素のある現代劇に出演。片や映画では朝鮮第15代王・光海君の若き日を演じた『代立軍 ウォリアーズ・オブ・ドーン』や、民主化闘争の犠牲になった大学生役で特別出演した『1987、ある闘いの真実』などの硬派な作品で印象を残した。これらの様々な作品を経験した結果、何も考えずに心の赴くままに演じようという考えに至って、自然にスランプから脱していたという。

2019年には、かつてイ・ビョンホンが主演した映画をドラマ化した「王になった男」で、狂気の王イ・ホンと、彼の影武者に仕立てられた人のいい道化ハソンの2役を演じ、唯一無二の存在感を発揮。正反対の2役の演じ分けは見事としか言いようがない。ここでは、それまで見せたことのないセクシーな男性美も披露し成長を感じさせた。この年は、幽霊専門ホテルの支配人となった青年チャンソンに扮したファンタジーロマンス「ホテルデルーナ〜月明かりの恋人」も大ヒット。永遠の時を生きる孤独なヒロイン・マンウォル(IU)に寄せる、チャンソンの深い想いに心揺さぶられる。

幽霊専門ホテルの支配人を演じた「ホテルデルーナ~月明かりの恋人」
幽霊専門ホテルの支配人を演じた「ホテルデルーナ~月明かりの恋人」[c]Netflix / Courtesy Everett Collection / AFLO

実力と人気に加え、興行的実績も上げて確固たる地位を築いたヨ・ジングが、次に選んだのは、ロマンスのかけらもない本格クライムサスペンス「怪物」(22)だった。彼が演じたのは、捜査のためにソウルから田舎町の交番にやって来くる、潔癖症で気難しいエリート警官のジュウォン。シン・ハギュン扮するエキセントリックな地元の警官と対立しながら、事件解決のために協力するうち次第に変わっていくものの、最初は周囲の人にとげとげしい態度で接する感じの悪い人物。自分とはほぼ共通点がないというキャラクターへの、鮮やかな変身ぶりがさすがだ。

サスペンス「怪物」で新たな一面を見せたヨ・ジング
サスペンス「怪物」で新たな一面を見せたヨ・ジング[c]JTBC / courtesy Everett Collection / AFLO

『同感』での自然な演技は物語にリアリティを与える

最新主演作の『同感〜時が交差する初恋〜』では、ロマンあふれる作品の等身大の主人公として、誠実で爽やかな魅力を十二分に発揮した。後輩のハンソル(キム・ヘユン)に一目惚れして恋心を募らせる大学生ヨンは、偶然無線機でつながった女子大生ムニ(チョ・イヒョン)から恋のアドバイスを受けるようになる。驚くことに、ヨンとムニは1999年と2022年、23年もの隔たりがある異なる時代を生きていた。ヨ・ジング本人にかなり近いのではと思わせる、好感度の高いヨンを見ているうちに、彼が本当にその時代を生きている若者に思えてきて、その心に寄り添う気持ちになっていることに気づく。ファンタジックな作品であっても、彼の自然な演技が映画にリアルさを与えている。

カメのモンマンとアパートの屋上に暮らす暮らすヨン
カメのモンマンとアパートの屋上に暮らす暮らすヨン[c]2022 GOGOSTUDIO INC. ALL RIGHTS RESERVED

どんな作品でもことさらに演技力を見せつけることなく、誠実に役柄と向き合い、時代や設定を超越して、キャラクターに真実味を持たせるのがヨ・ジングの素晴らしい点。それだけでなく、年齢を重ねても損なわれることのない純粋さと、よく響く魅力的な低音ボイスという大きな武器まで持っている。そして、まだ26歳なのだから可能性は無限大。今後も多彩な作品で観る者の心を掴んでくれるに違いない。


文/小田 香


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