ドウェイン・ジョンソンのルーツもここに! 『ネクスト・ゴール・ウィンズ』舞台のサモアは映画界でも人気
“モアナ”や“ワイスピ”でも描かれたサモアの文化
サモアと聞いてラグビーを思い浮かべる日本人は多いと思う。2023年W杯ほか日本のブレイブ・ブロッサムズと何度も対戦しているので、試合を観戦した人もいるだろう。サモアを含むポリネシアのチームで特徴的なのが、ゲーム前に行う「ウォー・クライ」。war(戦い)とcry(雄叫び)を組み合わせた言葉で、おもに戦いの前に士気を鼓舞し、相手に敬意を払うための儀式だ。ニュージーランドのオールブラックスが行う“ハカ”がよく知られているが、サモアは“シバタウ”と呼ばれるスタイル。声を上げ、太ももや腕をたたきながら力強くポーズをとる姿は日本でも話題になった。ウォー・クライはラグビーに限らず行われ、本作ではサッカーの試合前に米領サモアチームがシバタウを行う姿を見ることができる。
マウイはエンタメとも関わりがある。美しい海に囲まれた架空の島モトゥヌイを舞台にしたディズニーの長編アニメーション『モアナと伝説の海』。そのモデルになったのが、サモアを含むポリネシアの島々だった。製作にあたりスタッフは、サモアやフィジー、タヒチ、ニュージーランドからハワイまで広く取材を行い、各地の伝説をヒントに少女モアナが大海原に出る物語を執筆。エメラルドグリーンの海、青い空に白い雲など美しい自然描写はもちろん、楽曲にもポリネシアのリズムが取り入れた。なお、劇中モアナが一緒に冒旅をするのが筋骨隆々の半神半人マウイ。その声を担当したのがプロレスラーからアクションスターに転向した人気俳優ドウェイン・ジョンソンだ。実は彼の祖父はマウイ出身のプロレスラーのピーター・メイビアで、マウイのキャラクターデザインにインスピレーションを与えた人物でもある。ちなみにメイビアは日本を舞台にした『007は二度死ぬ』でボンドを襲う殺し屋役で、ショーン・コネリーと派手な格闘シーンを演じていた。そんな祖父の血をジョンソンも受け継いだということだ。
大ヒットシリーズ9本目の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』は、ドウェイン・ジョンソンが自らのルーツに迫る作品だった。ジョンソン演じる元米外交保安部の捜査官ルーク・ホブスが、宿敵だった元MI6のデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)とコンビを組んでテロリストと戦うスピンオフ。ホブスはサモア出身と設定され、クライマックスでは故郷に戻り家族や地元の仲間とテロ軍団を迎え撃つ。ジョンソンは製作にも名を連ね、決戦の前にサモアの“ファミリー”と共に気迫あふれるシバタウを披露。そのまま肉弾戦になだれ込む、サモア魂炸裂のアクション巨編に仕上げている。
もう一本紹介したいのが、日本でも劇場公開された『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』だ。タイトルでお分かりのように『ネクスト・ゴール・ウィンズ』の元ネタというべき長編ドキュメンタリー。マイケル・ファスベンダーが演じたロンゲン監督はじめ、1試合31ゴールを許し心が折れたキーパーのサラプ、性転換を控えた“紅一点”ジャイヤほかCEOやコーチなど映画に登場した超個性派メンバーの多くが本人そっくり。映画版はめちゃくちゃ笑えて、ホロリとさせるワイティティ監督らしいヒューマンドラマだが、選手たちのスピリッツの部分を含め事実に忠実だったことがよくわかる。まさに“事実は小説より奇なり”を地で行く作品だったのだ。映画を観た後、復習としてぜひ見てほしい作品だ。
日本からの直行便がないこともあり、名前は聞いたことがあるけれどあまり知られていないサモアや米領サモア。ポリネシアらしいゆっくりと時間が流れる自然豊かなこの地の魅力の一端を『ネクスト・ゴール・ウィンズ』でたっぷり味わってほしい。
文/神武団四郎