「SHOGUN 将軍」主演&プロデュースの真田広之が美術からセリフまでこだわり抜いた意気込み「日本人が観て納得できるものに」
「要望をリストアップし、ある種の条件付きでお引き受けした」
主演だけでなくプロデューサーとしても名を連ねている真田だが、当初は俳優として出演をオファーされたという。「以前お仕事をしたことのあるプロデューサーから、虎永を演じてくれないかとオファーをいただきました。その時に、もし自分が出演するならば、日本人役は日本の俳優が演じるべきとか、時代劇専門のクルーを日本から呼んでほしいなど要望をリストアップし、ある種の条件付きでお引き受けしたんです」と当時を振り返る。『ラスト サムライ』(03)のころから日本の文化を海外に正しく伝えたいと語ってきた真田らしいこだわりだ。
そんな真田の意向を取り入れ準備が進められたが、プロジェクトは一度座礁してしまったという。「その後ジャスティン(・マークス)が参加することになり、オーセンティックな作品にするため製作にもかかわってほしいと彼からお話をいただいたんです。海外作品でも、日本を題材にするなら日本人が観ても納得できるものにという想いが強かったので、プロデューサーとしても参加することになりました」。
長く時代劇や日本舞踊(ぶよう)を学んできた真田は、美術や衣装からセリフに至るまであらゆる面に目を配ったという。「大切にしたのは、可能な限りステレオタイプの描き方を避けること。西洋化や現代化をせず、舞台である1600年という時代を忠実に描くことにはこだわりました。トレンドな表現をせず王道で貫くことで、ユニバーサルなテーマとして海外の観客に受け入れられるのではないかということです」と語る真田は、時代劇だからこそ伝えられるものがあるという。「現代劇ではちょっと照れて言えないようなことも、ストレートにポンとぶつけられる。それは時代劇ならではですね。また精神性も含めた日本の文化、美学も現代劇より時代劇のほうが伝えやすいんです。そういったものを広く海外に発信することに意義があると思います」。
「浅野君とはあうんの呼吸で、徳馬さんとも長年の信頼関係をにじませることができた」
英国で活躍しているジャーヴィスはじめ、按針の通訳を務める戸田鞠子を演じたアンナ・サワイ、虎永の家臣である樫木藪重を演じた浅野忠信、太閤の側室である落葉の方を演じた二階堂ふみ、虎永の腹心、戸田広松を演じた西岡徳馬ほか、錚々たるキャストが集結した本作。
共演者の印象を聞いてみたところ、「コズモ(・ジャーヴィス)は本当にストイックな役作りをする方で、キャラクターの出身地のアクセントを忠実に再現し、オフでも通したくらいの入り込みよう。撮影時、彼とはトレーラーで部屋が隣同士だったのですが、声を枯らすシーンの前は部屋で大声で叫ぶなどリアルなパフォーマンスをしてくれて、周りにもいい影響を与えてくれました」と絶賛。「浅野君は30年以上、何作も一緒にやってきたので虎永の家臣という関係にはもってこいで、あうんの呼吸でやれました。徳馬さんとも30年以上、敵方の武将や親子などいろんな関係性を演じてきた歴史があるので、その信頼関係をにじませることができたと思います」と明かしてくれた。
演じることのほか、プロデューサーとして現場で共演者のサポートも行ったという。「勇気を持って初めての海外撮影に飛び込んでくださった方もいますので、とにかく皆さんのいいパフォーマンスを引き出すことも自分の役割だと思って臨みました。できる限りシステムの違いを説明したり、海外スタッフとの仲介や通訳など環境作りに努めました。皆さんもそれに応えてすばらしいパフォーマンスをしてくれました」と称えた。