元警視庁刑事が未解決事件を描いた『12日の殺人』で驚いた捜査の”リアル”さとは?取り調べでは「相手以上にしゃべったら逆効果」
未解決事件に挑む葛藤「自信をなくしてしまうこともある」
次第に捜査は、立ち往生。捜査が難航していく過程では、捜査官たちが証拠もないなか犯人を“男性だ”と決めつけてしまう展開もある。吉川は「クララの女友だちを取り調べする際にも、男性との交友関係に絞って、話を聞いていました。あのように、決めつけや一方的な目線で取り調べを行うことは大変危険です。考えが偏ってしまうと、事件の本質からどんどん離れてしまう。そこに相棒がいれば、『ちょっとそこはもう1回考えてみましょう』と修正を促すこともできる。そういったことも相棒の役割です」とその重要性について説く。
捜査官たちは事件にのめり込むうちに精神的に疲弊し、それが私生活にも影響を及ぼしていく。吉川は「解決していない事件に関わっている時は、どうしても私生活でもそれを引きずってしまう」と劇中の捜査官たちに心を寄せつつ、具体的なシーンについてこう語る。
マルソーは私生活で夫婦関係に問題を抱え、離婚寸前の状況に苦しんでいる捜査官だ。吉川は「クララのことを聖女だと言う人もいれば、悪女だという人も出てきます。悪女だという話になった時に、マルソーは、自分と奥さんとの問題と絡めながらクララのことを考えてしまう。あの描写は、マルソーの混乱をよく映しだしているなと驚きました」と事件と私生活との境界線でもがくマルソーについてコメント。「また容疑者の恋人が自分の奥さんと同じ名前だとわかると、マルソーは過剰に反応したりしていましたね。刑事って結構、自分が取り扱った事件の関係者の名前をいつまでも覚えているものなんですよ。私自身、少年係の仕事に従事していた際にはたくさんの少年たちと出会い、名前も覚えるようになりました」と振り返る。
ヨアンも、常に関係者の証言やクララの無残な遺体が頭を駆け巡り、自身の心が“壊されていく”ような精神状態に陥ってしまう。吉川は「事件が解決をしないうちは、潰されてしまうような気持ちになることがよくあります」とヨアンの心情に共感しきり。「私も、逮捕状を取って指名手配をしても、なかなか容疑者が捕まらなかった経験があります。捕まるまでは、毎日そのことばかりを考えていました。宿直明けで家に帰って子どもをお風呂に入れている時に『あそこに立ち寄ったらしい』という電話がかかってきて、慌てて飛んでいったこともあります」とやはりなにをしていても事件のことが頭から離れなかったそうで、「日本では現在、警察から指名手配をされている者は約540人にも上ります。そういった未解決事件に携わっていると『これで間違いないのか?』とプレッシャーがのしかかったり、自信をなくしてしまうこともあります」と話すように、その苦悩や重圧は相当なものだろう。
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