元警視庁刑事が未解決事件を描いた『12日の殺人』で驚いた捜査の”リアル”さとは?取り調べでは「相手以上にしゃべったら逆効果」
「刑事はとてもすてきな職業」ハードな仕事における原動力とは?
取り調べに苦労し、捜査官が怒りをぶつけるように廊下の壁を叩くシーンについて、「ああいうこともありますね」と目尻を下げた吉川は「フランスでも日本でも同じなんだなと思いました。刑事は正義のために行動し、真実を追求していきます。どうしても自分の思い通りにいかないことも出てきますから、苛立ちを物にぶつける人だっています。私たちの時代はロッカーを蹴っ飛ばしながら歩いている人を見たことがありますよ」と述懐。
劇中では、捜査官という仕事について「おかしな稼業だ」と分析する者もいる。吉川は「刑事をやっていると、ストレスやトラブルは付きものです」と打ち明けるが、本作を観ても身を削りながら、事件解決に勤しんでいる捜査官とは、なんともハードな仕事にも感じられる。しかし吉川は「すごくすてきな仕事だと思っています」と誇りと情熱をみなぎらせ、「数多くの人とお話ができるし、なによりも事件を解決できるという意味では、本当にすてきな職業。事件解決までには紆余曲折がありますが、決して嫌な仕事だとは思っていませんでした」とキッパリ。
原動力となったものについて尋ねてみると、「綺麗事のようですが、本音を言いますよ」と前置きしつつ、吉川は「『ありがとうございました』『助かりました』と言ってもらえた時の気持ちは、最高です。僕が少年係にいた時に、家出をした女の子を捜索したことがあります。ある時、その子が戻ってきて、僕が転勤した先にお母さんと一緒に訪ねてきてくれたことがあって。『吉川さん、おかげさまで助かりました』と言ってくれたんですが、なんとその子は自分の赤ちゃんを抱いていました。その姿を見てうれしくなっちゃいましたね」とあらゆる人生に関わった日々を回想し、目を細める。
モル監督は本作を制作するにあたって、実際にグルノーブル警察に赴き、1週間かけて捜査官たちの日常を観察したのだという。警察監修としてあらゆるドラマや映画に携わることもある吉川から見ても、本作は「刑事のプライベートや葛藤を、とてもよく映しだしている映画」だと太鼓判。「本作を通して、刑事や警察官たちも、実はこうやって悩みながら仕事に従事しているんだという点について見ていただけたらうれしいです。本作に出てくる刑事たちの姿には、いい意味で飾りっ気がない。そういった姿を知ってもらえたら、刑事を見る目が変わってくるかもしれません」と期待していた。
取材・文/成田おり枝
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