【ネタバレレビュー】その展開は予想できなかった…ダークホースの暴挙に激震が走る「SHOGUN 将軍」 第4話
愚息・長門が与える衝撃!第5話が待ち遠しい
第4話の肝は、この村で按針がいかにして自分の居場所を築いていくかにある。第4話のタイトルである“八重垣”とは、鞠子が按針に語る、侍社会での心の在り方の象徴。礼儀や作法はあくまで上辺のものであり、真実はつねに八重の垣根に守られた自分の心の中にある。ここでの鞠子の言葉は禅問答のようでもあるが、それだけに味わい深い。按針が初めて地震を体験した際にも、鞠子はこの地で生きるための哲学を話しているので、こちらにも耳を傾けてほしい。
ともかく、按針はここから自分の居場所を築いていくわけで、鞠子の協力はもちろん藤の勇気ある行動によって、按針が最初は牢獄のように感じていた新居の空気になじんでいく。一方で、大砲の長距離砲撃を樫木藪重(浅野忠信)の軍に指導することにより、武士としての居場所も出来上がっていく。納豆を食べることにトライするのも、鞠子にロンドンの話をしながら恋人同士のような会話をするのも、按針が嫌々ながらもここでの生活を受け入れていったことの表われだ。
自分の居場所を築いてく按針とは対照的に、足元が崩れていくのを感じているのが虎永の家臣にして伊豆の大名、藪重だ。前話で知らず知らずのうちに虎永の大坂脱出に手を貸して、虎永と敵対する五大老の1人、石堂和成(平岳大)の怒りを買ったうえに、虎永に五大老職を辞すと打ち明けられて激しく動揺し、さらに石堂の部下、根原丞善(ノブヤ・シマモト)に大坂に来るよう詰め寄られて絶体絶命となってしまう。いまさら石堂に寝返るにも寝返られない。クセ者だけに、ここでくじける藪重ではないと思うが、どう乗り切るのか、今後が楽しみになってくる。
この第4話では、先のドラマをおもしろくしそうなキャラクターがぞろぞろと動きだす。先述の藤は、嫌々ながら按針の正室になったものの、その宿命を受け入れてからの凛とした姿は堂々としており魅力的だ。また、藪重の甥っ子である網代の領主、央海は叔父や虎永に忠誠を示しながらも遊女、菊(向里祐香)との恋に溺れており、彼女の「央海様がお殿様だったらよかったのに」という言葉に、なにか思うところがある様子。
しかし、誰よりもドラマを動かすのは、虎永が去ったあとに目付け役として網代に残った息子の長門(倉悠貴)だ。ここまでの3話では若気がフライングするバカ息子的なポジションで、さほど目立たなかったが、ここにきて存在が俄然クローズアップされる。第4話は落ち着いた群像劇のようなスタイルかと思って見進めていたが、最後の最後で彼がとんでもない事件を起こしてしまうのだ。偉大な父に認められたい。父を救いたい。周囲に尊敬されたい。その気持ちもわかるが、これは取り返しのつかないことなのでは!?
ともかく、このクライマックスはシリーズでもっとも激しいバイオレンス描写に彩られており、強烈な印象を残すに違いない。舞台が網代限定となり、牧歌的な空気に包まれると思いきや…の急転直下。どうする、虎永!?早く次が観たい!
文/相馬学