『レオン』から30年!最新作『DOGMAN ドッグマン』に見るリュック・ベッソンの進化
『DOGMAN ドッグマン』はフランス映画とアメリカ映画に精通した“らしい”作品
物語の舞台はアメリカ、ニュージャージー州のニューワーク。ニュージャージーはエリア・カザン監督、マーロン・ブランド主演のマスターピース『波止場』(54)からジム・ジャームッシュの『パターソン』(16)まで新旧の名作が撮影された場所だ。劇中には、一瞬だが木造住宅が建ち並ぶ街から臨むハドソン川越えの摩天楼が印象的に挿入される。ベッソンがこの地域にカメラを据えるのは、『マラヴィータ』(13)以来、約10年ぶり。『レオン』以来、30年ぶりになる。
映画界にデビューしてからおよそ40年、その間、脚本と製作を担当した作品を含めると90本近い作品を発表し続けてきたベッソンだが、その作風はいつも“ハリウッド的”と評されてきたものだ。キャリア初期の監督作『サブウェイ』(85)や『グラン・ブルー』(88)で見せた実験的な映像から、“ヌーベルバーグ”と比較して“ニューウェイブ”と評されることに反発し、かといって、ハリウッドに軸足を置くこともなかったベッソン。最新作はフランス映画とアメリカ映画の両方に精通した、彼らしい作品とも言えるのではないだろうか。
次回作『Dracula - A Love Tale』にもケイレブ・ランドリー・ジョーンズを起用
ダグラスを演じるのは『ニトラム/NITRAM』(21)で実際に起きた銃乱射による大量殺人事件の犯人を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。そこはかとなく漂う退廃感とジェンダーレスなムードはまさに適役で、ベッソンは次回作としてすでに発表されている『Dracula - A Love Tale(原題)』のタイトルロールをジョーンズに打診し、作品は製作準備段階にある。新たな鉱脈(主演スター)を掘り当て、リュック・ベッソンの米仏的な映画作りは新たな段階へと入っていくのだろうか。
文/清藤秀人
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