なぜ、いまリメイクしたのか?黒沢清自らが手掛ける『蛇の道』監督インタビュー映像
1998年に公開された同名タイトルを黒沢清監督が自らフランスを舞台にリメイクする『蛇の道』が6月14日(金)に公開される。このたび、黒沢監督のインタビュー映像が解禁となった。
『岸辺の旅』(15)で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞に輝き、『スパイの妻 劇場版』(20)で第77回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞、『Chime』(24)のワールド・プレミアを第74回ベルリン国際映画祭で行うなど、世界三大映画祭を中心に国際的な評価を次々に獲得してきた黒沢清監督。『蛇の道』は、そんな黒沢監督が、1998年に劇場公開された同タイトルの自作をフランスを舞台、柴咲コウを主演に据えセルフリメイクし、自ら「最高傑作ができたかもしれない」と公言するほどのクオリティで放つリベンジサスペンスの完全版だ。
愛娘を何者かに殺されたアルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)は、パリで働く日本人の心療内科医、新島小夜子(柴咲)の協力を得ながら犯人探しに没頭、復讐心を募らせていく。だが、事件に絡む元財団の関係者たちを拉致監禁し、彼らから重要な情報を手に入れたアルベールの前に、やがて思いもよらぬ恐ろしい真実が立ち上がってくるのだった。柴咲は、フランス語の厳しいレッスンに臨み、現地で実際に生活をして、パリで暮らす謎多きヒロイン像を完璧に自分のものにしている。また、『ドライブ・マイ・カー』(21)、『首』(23)で世界的に注目を集め、黒沢監督とは5度目のタッグとなる西島秀俊が心を病んだ小夜子の患者、吉村役で、『ゴジラ-1.0』(23)、本年24年公開の『犯罪都市 NO WAY OUT』(公開中)など国境を超えた話題作への出演で勢いに乗る青木崇高が小夜子の夫である宗一郎役で出演。さらに、『ダゲレオタイプの女』(16)に続く黒沢監督作品への出演となるマチュー・アマルリック、『ネネットとボニ』(96)などのグレゴワール・コランらフランスの名優が拉致される財団の幹部に扮し、脇を固めている。
今回、黒沢監督が26年振りのセルフリメイクに踏み切った理由にせまるインタビュー映像が到着。フランスのプロダクションからリメイクのオファーがあった際に、真っ先に浮かんだのが『蛇の道』だったと、黒沢監督はリメイクのきっかけを明かしている。徹底的に復讐していくという、いつの時代でも国境を超えて通用する力強いストーリーを、Vシネマだけで埋もれさせるのはもったいない、とリメイクに踏み切ったという。フランスを舞台に、主人公を男性から女性へと大きく改変した部分について「最初の時点で主人公を日本人女性にしたいという思いがありました。彼女ひとりを女性にすることで、彼女がすべてをコントロールしているという部分がより出ているのかなという気がしました」とこだわりを明かす。
また、柴咲について話が及ぶと「なんといっても目つきが良い。あの目つきで見つめられると、男はなんか…あらぬ方向に誘導されてしまいそう」と印象を語り、「彼女、すごいんですよ。動物的な、獰猛な動きがまさにこの主人公にぴったりだなと、柴咲さんでよかったと思いました」と柴咲のその身体能力、俊敏な動きを絶賛した。また、ほかにも『レ・ミゼラブル』を観てオファーを決めたというボナールや、アマルリック、西島、青木らキャスト陣について、貴重な制作エピソードを語る場面も収められている。
時と国境を越え『蛇の道』はどのようにスクリーンに蘇るのだろうか?事件の思いがけない首謀者と、国境を越えた徹底的復讐の顛末をぜひ劇場で目にしてほしい。
文/鈴木レイヤ