ソン・ガンホと「サムシクおじさん」で競演!若手実力派ピョン・ヨハンが見せる繊細な感情の機微

コラム

ソン・ガンホと「サムシクおじさん」で競演!若手実力派ピョン・ヨハンが見せる繊細な感情の機微

エモーショナルなアクションで魅せる!

ほとんど全てのアクションをピョン・ヨハン自身で演じた『声/姿なき犯罪者』
ほとんど全てのアクションをピョン・ヨハン自身で演じた『声/姿なき犯罪者』[c]2021 CJ ENM Co., Ltd., SOOFILM ALL RIGHTS RESERVED

多面体な魅力を持つピョン・ヨハンだが、特にドラマ「六龍が飛ぶ」以降は磨き上げた運動神経とフィジカルを活かしたアクション俳優としての評価が高い。ゆえに韓国現代史をテーマにした重厚さがある「サムシクおじさん」でのピョン・ヨハンは、現段階ではややおとなしすぎると感じられるかもしれない。そのうえで、アクション俳優としての持ち味が全面に出ていたクライムサスペンス『声/姿なき犯罪者』(21)のインタビューで「振り込め詐欺犯罪によって、大切な人々が傷つけられたことの怒りを胸に秘め、感情を全身に込めたアクションで表現した」と話していたことを思い出す。ただ強靭な肉体や派手な動きを追求したり、または典型的な感情演技に頼るのではないから、ピョン・ヨハンのアクションは見る者の心を揺さぶる。

巷では浮気者と呼ばれながら、裕福な家系への葛藤を心に抱えた青年キム・ヒソン
巷では浮気者と呼ばれながら、裕福な家系への葛藤を心に抱えた青年キム・ヒソン[c]Everett Collection/AFLO

また「ミスター・サンシャイン」でかつて演じた、資産家の青年キム・ヒソン役についてピョン・ヨハンは「表向きは優しく笑うが本当の笑顔ではなく、お酒がないと眠れない気の毒な人」と明かしている。こうした感情の機微こそがピョン・ヨハンの最大の武器であり、地に足のついたアクション演技を支えているのではないだろうか。


5月15日より韓国で公開中の『彼女が死んだ(原題)』も、注目に値する。ピョン・ヨハンが独立映画の旗手として名声を得る出世作となった、SNSで繰り広げられる魔女狩りの真相を暴く『ソーシャルフォビア』を想起させる現代的サスペンスで、ピョン・ヨハンは客が預けた鍵でその家に入り、他人の人生を盗み見る趣味を持つ公認仲介士ジョンテを演じる。

2年の延期を経て待望の劇場公開となった『彼女が死んだ(原題)』
2年の延期を経て待望の劇場公開となった『彼女が死んだ(原題)』画像はピョン・ヨハン(@byunyohan_official)公式インスタグラムのスクリーンショット

あるとき、SNSインフルエンサーのソラ(シン・ヘソン)への興味がエスカレートし、ついに彼女の家まで押しかけてしまったところ、ソラがソファーで死んでいるのを発見する。本作にも激しいアクションシーンがあるそうだが、撮影について問われると「アクションも実は感情シーン」と、やはり感情の発露として体を使い、激しいアクションを生み出していることを明かしている。

社会派のテーマが好まれ、珠玉のエンタテインメントを生み出してきた韓国コンテンツにあって、「サムシクおじさん」はこれまであまり主題とされることのない1950年〜1960年を取り上げている。そうした舞台の新味はもちろんのこと、ピョン・ヨハン演じるサンの表情がこれからどう変容し、そこで2人の奇妙な共犯関係がどう着地するのか。最後まで目が離せない。

文/荒井 南


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