「共感できる言葉が見つかる」「不思議なノスタルジー」『違国日記』が心に刺さる理由を感想コメントでひも解く
「あのころを思い出す…」朝、えみりたち“はざま”の世代
朝やえみりら“はざま”で揺れる世代には、「あのころを思い出す…」というコメントがいろいろな思い出と共に寄せられている。中学を卒業し、高校生になったばかりの朝は、周囲の友人たちに「どうする?」と聞きがちで入る部活もなかなか決められずにいたが、軽音楽部への入部を決める。孤立せず普通でいたい。でも、特別でもありたい。このような相反する気持ちに思い悩む姿も10代ならではで、
「楽しかったはずなのに、突然ポーンと一人だけ世界に投げだされる感覚。まだ世界が狭い学生時代特有のあの感じを思い出して胸がぎゅってなりました」(女性・37歳)
「やりたいけど自分からは言いだせないという感じは自分の高校時代を思い出した」(男性・33歳)
と自身の学生時代を回顧する声と共に、そんなみずみずしさをナチュラルに表現した早瀬を「朝役の子がとにかくすばらしかったです」(女性・38歳)「朝ちゃんがどこにでもいそうな中学生という感じでよかったです」(女性・34歳)など、大勢が称賛している。
また朝の親友、えみりは朝にも言えないある秘密を抱えており、どこか達観しつつも、誰にも相談できない苦悩と繊細な感情を持つキャラクターだ。
「彼女も生きづらさを感じつつ、自分の意思をしっかり持っていてよかった」(男性・30歳)
「(朝と)えみりちゃんとの体育館のシーン。若者ならではの根拠のない自信や希望と、無力さと、そして優しさが詰まったすてきなシーンです」(女性・37歳)
「間違えたり傷つけ合ったりしながらもまっすぐに朝と接するえみりが印象に残りました」(男性・25歳)
それを表現した小宮山の存在感も際立っており、「他者への期待と諦めのバランスをうまく表現していた」(男性・28歳)「難しいシーンも多いなかで、印象的な演技がたくさんあって光っていた」(女性・36歳)と、彼女の繊細な演技に心打たれたという人も多くいる様子。
違う国で生きる槙生と朝。それでも静かに寄り添っていく「関係性の変化」に感動
槙生が朝に伝えるとおり、人と人では決してわかり合うことができないこともある。それでも、揺るがないと思っていた自身の考え、他者との関わり方を少しずつ変えていく槙生、彼女を理解していく朝の関係性の変化に感動する人たちが続々と現れている。
「人と人の溝、超えられない(他者という)ギャップというテーマを抱えつつも、朝のみずみずしい視点がラストの美しい余韻につながっていたと思う」(女性・31歳)
「槙生と朝が共に生活していくうちに、朝の考え方の変化や両親に対する想いを乗り越えていく姿に感動しました」(女性・33歳)
「2人の関係性の変化という点でとてもよかったと思いました。最初はぎこちない2人でしたが、私も槙生ちゃんに感情移入していって、朝がどんどんかわいく見えてきたので不思議でした」(女性・36歳)
生き方に悩んでいる人、自分の気持ちを理解してもらえず苦しんでいる人は多い。人生はままならないことばかりかもしれないが、『違国日記』はそんな人たちの心に寄り添い、肯定してくれる作品になっている。槙生と朝たちの関わり合いを見守りながら、前へと進む気づきを受け取ってほしい。
構成・文/平尾嘉浩