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トム・ヨーク、トレント・レズナー&アッティカ・ロスらが参加!『チャレンジャーズ』にいたるルカ・グァダニーノ作品の音楽へのこだわり

コラム

トム・ヨーク、トレント・レズナー&アッティカ・ロスらが参加!『チャレンジャーズ』にいたるルカ・グァダニーノ作品の音楽へのこだわり

『ボーンズ アンド オール』のエグい題材を詩情に中和したトレント・レズナーとアッティカ・ロス

2022年の監督作『ボーンズ アンド オール』でグァダニーノは、トレント・レズナーとアッティカ・ロスを起用。オルタナロックユニット、ナイン・インチ・ネイルズの活動でも知られている彼らは、映画音楽の分野でも『ソーシャル・ネットワーク』(10)をはじめとするデヴィッド・フィンチャー作品で名を成し、『ソウルフル・ワールド』(20)では第93回アカデミー賞作曲賞を受賞している。彼らが本作に提供したのは、シンプルで静謐なスコア。若い吸血鬼カップルによる虐殺と逃避行というエグい題材を、詩情に満ちた音楽で中和しているともいえるだろう。

デジタルビートを大々的に導入して『チャレンジャーズ』に躍動感をもたらす

そして、新作『チャレンジャーズ』では、このレズナーとロスのタッグが再起用されているが、前作とは音楽がガラッと異なる。というのも、ここではデジタルビートが大々的に導入されているのだ。シンセサイザーの音色は華やかで、ビートはダンサブル。すなわち、かなり躍動的なノリと言えるだろう。物語はプロテニスプレーヤーである男女3人の愛憎を描いたもので、合間に宿命的な試合の模様が頻繁に挿入される。この熱戦を刺激的に彩るという点で、レズナーとロスによるスコアは実に効果的だ。

既存のロック&ポップスをセレクトする視点も確か


音楽担当者を主体にして、ここまで紹介してきたが、グァダニーノ作品はスコアだけではなく、既成のロック&ポップスが多数用いられている。『君の名前で僕を呼んで』ではU2の「ワン」やF.R.デイビッドの「ワーズ」、『ボーンズ アンド オール』ではデュラン・デュランの「セイヴ・ア・プレイヤー」やa-haの「ザ・サン・オールウェイズ・シャイン・オンTV」、そして『チャレンジャーズ』ではテヴィッド・ボウイの「タイム・ウィル・クロール」、ファイン・ヤング・カニバルズの「サスピシャス・マインド」など、ヒットチャートを賑わせた曲が印象的にフィーチャーされる。音楽の妙に注目しつつグァダニーノの作品に触れたなら、また違った魅力が見えてくるだろう。

文/相馬学

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