“音楽”と劇場環境は相性抜群!『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』異例づくめの首位スタートのワケ

コラム

“音楽”と劇場環境は相性抜群!『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』異例づくめの首位スタートのワケ

6月7日から6月9日までの全国映画動員ランキングが発表。芳文社の「まんがタイムきらら MAX」にて連載中のはまじあきの人気4コマ漫画を原作にしたテレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」を、劇場用2部作として再編集した前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』(公開中)が、見事に初登場で首位を勝ち取った。

『ぼっち・ざ・ろっく! Re:』が『コナン』『あぶ刑事』を撃破

【写真を見る】OPは“結束バンド”の新曲&新規アニメに!劇場総集編の首位獲得は「鬼滅の刃」以来
【写真を見る】OPは“結束バンド”の新曲&新規アニメに!劇場総集編の首位獲得は「鬼滅の刃」以来[c]はまじあき/芳文社・アニプレックス

初日から3日間で観客動員数14万113人、興行収入2億1847万円を記録した『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』。本作は、極度の人見知りの高校生“ぼっちちゃん”こと後藤ひとり(声:青山吉能)が、ひょんなことから伊地知虹夏(声:鈴代紗弓)に声を掛けられ“結束バンド”に加入。個性的なメンバーたちと共に成長していく姿を描いた物語だ。

テレビアニメが「劇場総集編」というかたちで上映されるケースはこの10年ほどで急激に増加しているが、概ねそれが制作されるのはテレビ放送時にかなりの人気を集めたものばかり。それでもこうして動員ランキングで首位を飾ることはあまり多くなく、まっさきに思い浮かぶのは「鬼滅の刃」の『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』(23)と『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』(22)ぐらいであろう。

人見知りの主人公がバンドを通して成長!テレビアニメ版は大反響を巻き起こした
人見知りの主人公がバンドを通して成長!テレビアニメ版は大反響を巻き起こした[c]はまじあき/芳文社・アニプレックス

たしかにテレビアニメ放送時には大反響を巻き起こしたとはいえ、なかなかに異例な『ぼっち・ざ・ろっく!Re:』の首位スタート。上映規模で見ても、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(公開中)や『帰ってきた あぶない刑事』(公開中)など、今週の動員ランキングで2位以下におさえた作品の多くがいずれも300館以上で公開されているなか、本作はそれらの半分以下。場合によっては3分の1程度の約130館と中規模である。

しかも先述の「鬼滅の刃」ではテレビ放送が控える次クールの第1話を劇場で先行体験できるというプレミア感があったように、新規要素で集客につなげるのが劇場総集編の通例。ところが今回の『ぼっち・ざ・ろっく!Re:』に関しては、劇中に含まれる新規アニメーション部分は結束バンドの新曲「月並みに輝け」が流れるオープニング映像ぐらい。もちろん作品ファンにとってみれば、それだけで十分すぎるくらい劇場に足を運ぶ動機になるのだが、それ以外が既存の映像で構成され、しかも前後編の前編。これは他にも観客を惹きつけるだけの動機が存在していることは明白だ。

見どころはやっぱり“音楽”!8月公開の後編にも期待は高まる
見どころはやっぱり“音楽”!8月公開の後編にも期待は高まる[c]はまじあき/芳文社・アニプレックス

そうなると考えられるのは、この「ぼっち・ざ・ろっく!」という作品に必要不可欠な“音楽”であろう。昨年、劇中の結束バンドのフルアルバムは2023年オリコン「作品別売上数部門 デジタルアルバムランキング」の年間1位、Billboard JAPANの「年間ダウンロードアルバムチャート」1位を獲得するなど、音楽作品として安定した支持を獲得。また『BLUE GIANT』(23)のような成功例からもわかるように、音楽アニメとそれをより良質な音響で楽しめる劇場環境との相性は言わずもがな抜群。


音楽アニメを好む新たなファン層を獲得することにもつながり、近年のヒットアニメ映画の法則にのっとるように既存のファン層やリピーター獲得に欠かせない来場者特典も用意されている。今後どこまで成績を伸ばすことができるのか楽しみであり、8月9日(金)に公開を控える後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』でさらに好成績をあげる可能性も高いと見た。

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