地味すぎる!?けど見逃せない…!「涙が込み上げてきた」「今年ベスト映画!」オスカー候補作に映画ファンが太鼓判を押す理由
2度のアカデミー賞受賞歴を持つアレクサンダー・ペイン監督と名優ポール・ジアマッティが『サイドウェイ』(04)以来のタッグを組んだ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』が公開中。第96回アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を賑わし、高い評価を集める本作には、試写会にてひと足早く作品を鑑賞した人からも
「今年ベスト映画に入れます!」(20代・男性)
「とてもすてきなヒューマンドラマでした。会場内もところどころ笑いに包まれるなど多幸感があり、エンドロールではじわじわと目元が熱くなりました」(20代・女性)
「こんなに『沁みる』物語だと思っていませんでした。泣かされました」(50代・女性)
など絶賛の声が数多く寄せられている。「もう1回観たい」や「泣ける」「沁みる」などの言葉が多く届いており、観客から寄せられた感想と共に、映画ファンが太鼓判を押す理由に迫っていきたい。
孤独な3人が交わる、心温まるクリスマスの物語
本作は寄宿学校のクリスマス休暇を題材に、休みを家族と過ごせない少年と彼を監督する嫌われ者の教師、戦争で息子を失った寮の料理長という孤独な魂を抱える3人の交流を、時に笑いを、時に涙を交えながら描くヒューマンドラマだ。
1970年、ボストン郊外の全寮制の名門バートン校ではクリスマス休暇を迎え、大半の生徒が家族の元へと帰っていった。そんななか、生徒からも教師仲間からも嫌われる古代史の教師ポール・ハナム(ジアマッティ)は、複雑な家庭事情により家に帰れなかったアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)の子守役に任命されてしまう。
学校にはハナムとアンガスに加え、ベトナム戦争で一人息子を失った料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)も残っており、3人は徐々に心を通わせていく。クリスマスの夜、「ボストンへ行きたい」と言いだしたアンガス。彼の希望を叶えるため“社会科見学”としてボストンへと一行は向かう。そこでそれぞれの秘密が明かされていく…。
観る者の心に残る、“置いてけぼり”にされた3人のキャラクター
これといった派手さや奇をてらった展開はいっさいないものの、観客の心に深く刻み込まれる本作。その根幹となっているのが、魅力的な3人の主人公たちだろう。
ジアマッティ演じるハナム先生は「不器用な生き方だが、自分らしさを失わず誠実に生きた方」(50代・女性)と寄せられているように、善良でいることを貫こうとした結果、怠惰な生徒たちに強く当たってしまう、口の悪い世渡り下手なおじさん。
「融通がきかないキャラだけど実は勉強家で思いやりあふれる教師であり、血の通った生徒思いの優しい男性」(30代・女性)
「学校にいた先生を思い出しました。偏屈なおじさんに見えて、意外といい人」(20代・女性)
「こんな先生に出会っていれば、きっと人生変わったし、救われただろうな…」(20代・男性)
頑固な振る舞いから勘違いされがちだが、根はいい人なハナム。正論を振りかざし、人付き合いが苦手、そんな複雑な人物像をジアマッティが巧みに活写。ある悲しい過去やコンプレックスを抱え自分の世界にこもりがちな男性が、徐々に心を開いていく様子には「気難しくも徐々に打ち解けていく演技がすばらしかった」(20代・男性)、「ポール・ジアマッティ史上No.1と言っても過言ではないかと思います」(20代・女性)など絶賛の声が並んでいる。
一方、そんなハナムを突き動かしていくのが、新鋭ドミニク・セッサが演じているアンガスだ。成績はいいが問題行動が多い。持ち前の回転の速さから、ハナムの嫌味にも間髪入れずに切り返す場面も。
「寂しさ、悪賢さ、優しさが、多くの人の印象に残ったと思います。思春期の不安定さと素直さがもう見てられないってドキドキしました。すばらしかった!」(30代・女性)
「狭い世界にいるあの年代の子の歯痒さがせつない。素を出せるようになったあとの子どもっぽさもまたせつない」(40代・女性)
などの感想からもわかるように、込み入った家庭背景を抱え、なかなか素直になれないアンガスだが、賢く、優しい心を持ったキャラクター。セッサはそんなアンガスの思春期特有の繊細な感情を見事に体現しており、「物分かりがよさそうなのに、まだまだ子どもだなと思わせられる絶妙に危うい年頃を見事に演じていると思いました」(20代・女性)、「今後引っ張りだこだろうな!つらさを抱えるものの演技が、ほかの2人に負けていない」(20代・男性)など称賛の声がズラリ。本作で映画デビューを果たしたセッサは、「グランド・イリュージョン」シリーズの3作目にあたる『Now You See Me 3』の出演を控えるなど、さらなる飛躍が期待される逸材だ。
「愛情があり、彼女の言葉ひと言ひと言に心が包まれました。寄り添おうと相手をしっかり見ている。自分のことも大切にしてほしい、と思ってしまうくらい優しい」(20代・女性)
「ぶっきらぼうだが、包容力があるおもしろい人」(40代・男性)
「しゃべらずともその存在感はすさまじく、人の気持ちがわかる女性なのだろうなと思いました。妹と言葉もなく、抱擁するシーンは涙腺が緩みました」(20代・女性)
「誰からも愛されるような心温かい女性。亡くなった息子をずっと愛し続ける、とても芯のある女性」(10代・男性)
などの熱量のある言葉がズラリとアンケートに並んでおり、このことからも多くの観客の心に残ったことを証明しているのが料理長のメアリー。他者に関心がなさそうに見えて、しっかり観察し、時に皮肉めいた言葉でハナムをいさめる。ハナムとアンガスの関係を少し引いたところから見守る役どころを抜群の存在感で演じ、作品に深みをもたらしている。
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフは、息子を亡くした虚しさで心が折れそうになりながらも、ハナムやアンガスとの交流によって一歩ずつ前に進んでいくメアリーを言葉に頼らずに表現。「彼女の全方位的にどっしりした安定感がこの映画に欠かせなかった気がします。助演女優賞、納得です」(50代・女性)との言葉のとおり、本作でアカデミー賞助演女優賞受賞も納得の演技は、観客の心を揺さぶったようだ。