韓国映画界の女帝、キム・ヘスが30年以上世界中のファンに愛され続けている理由
“韓国映画界の女帝”とも呼ばれ、圧倒的な演技力とカリスマ性を持つキム・ヘス。中学生で芸能界入り、高校生で俳優デビューした大ベテランの女優だ。数々の作品に出演し、『タチャ イカサマ師』(08)で演じたチョン・マダム役で韓国を代表する俳優として位置付け、ドラマでも「シグナル」「ハイエナー弁護士たちの生存ゲームー」「未成年裁判」「シュルプ」など、様々なジャンルの作品をヒット作に導きいまも第一線で活躍している。
“女帝”キム・ヘス、最新作『密輸 1970』でクセの強い海女に変身!
そんなキム・ヘスは、日本公開を控える『密輸 1970』(7月12日公開)で海女となって現れる。韓国で大ヒットを記録した本作は、2023年の第44回青龍映画賞で最優秀作品賞を含む4冠に輝き、同年サマーシーズンの韓国で500万人以上を動員。共演者はヨム・ジョンア、チョ・インソンら豪華俳優陣が集結し、メガホンを握るのは稀代のヒットメーカー、リュ・スンワン監督だ。
物語の舞台となるのは1970年代半ばの韓国の漁村クンチョン。衝撃の実話から着想を得て作り上げた予測不能な海洋クライム・アクションだ。海女たちは失職の危機を乗り越えるために密輸品を引き上げる仕事を請け負うことになるが、税関の摘発に遭ってしまう。クセの強いキャラクターと海女たちの駆け引きバトルは、海の中に潜るようにぐいぐいと引き込まれ、こちらまで息をしたら負けそうな気持ちになってしまう。スカッとした爽快感は劇場で味わわないともったいない。
一世を風靡したハイティーンスター。すごいところはビジュアルだけではない!
キム・ヘスは1986年に『カムボ』で俳優デビューし、80年代のハイティーンスターとしてチェ・シラ、ハ・ヒラ、イ・サンアらと一世を風靡する。1993年には『初恋』にて、23歳で青龍映画賞の最年少主演女優賞を獲得した。20代から26歳差の先輩俳優との夫婦役、シングルマザー役など多様な役に挑戦して実力をつけていく。
日本では、ペ・ヨンジュンと共演した「愛の群像」や、本国で最高視聴率53.1%を記録した名作ドラマ「グッキ」で彼女の存在を知った人も多いのではないだろうか。30代には究極の愛憎と野望が渦巻く時代劇ドラマ「張禧嬪[チャン・ヒビン]」に挑む。朝鮮時代の3大妖婦と呼ばれたチャン・ヒビン役を演じ、最高視聴率は30%を超えKBS演技大賞を授賞する。
ここに至るまで順調に見える役者人生だが、デビューが早い彼女は30代という若さで壁にぶち当たる。新人俳優らが注目される中、当時の自分を「新鮮さがなければ飛び抜けたものもなかった」と語っており、出演依頼のジャンルはコメディーやロンスコメディーものが多かったという。いまでは考えられないが、トーク番組で自分が辛かった時期を振り返り、「どんなに頑張っても日の目を見ないこともある。その面では運がよかった。ただ努力し続けた」と話していた。
妖艶な魅力があふれる“イカサマ師”役で第2の全盛期に!
そこで転換期となったのが、韓国で2006年に公開された『タチャ イカサマ師』だった。生まれつきの勝負師ゴニ(チョ・スンウ)がタチャ(イカサマ師という意味の韓国語)に仕組まれた勝負に負けてすべてを失い、伝説のタチャに弟子入りしてリベンジするストーリーで、684万人を動員する結果に。キム・ヘスはゴニと手を組む妖艶な魅力があふれるチョン・マダムを演じ、今までとは違ったキャラクターで新たな印象を植え付けた。青龍映画賞では3度目となる主演女優賞に輝き第2の全盛期を迎える。以降も『10人の泥棒たち』(13)や『観相師 かんそうし』(14)など大ヒット作が続く。
映画やドラマの出演作の数がただ多いだけでなく、権威ある賞はすべて授賞した実力者だ。どんな役を演じても“やっぱりキム・ヘスだ”と納得してしまう力があり、キム・ヘスでなければ演じきれなかった役、成立しなかった作品を次々と生み出した。