【ネタバレレビュー】「七夕の国」謎もおもしろさも加速する4&5話!ついにベールを脱いだ、山田孝之演じる“頼之”の姿に驚愕
せつなくも美しい、ナン丸と幸子のよるロマンチックなシーンがお目見え
力を悪用しようとする高志に対して、特別な能力に目覚めたナン丸が「自分になにができるのか」と思考を深めるのが、第5話だ。
ある日ナン丸は、ショッピングセンターの駐車場で、子どもが車に閉じ込められてしまった場面に遭遇。力を使って車の窓をエグり、子どもを救出した。その動画がネット上を駆け巡り「あの青年は誰だ?」と一躍時の人となる。「世の中の役に立つ使い方がある」という想いを強くしたナン丸は、“ゴミ消し屋”として力の活躍できる場を探っていく。一方の高志&八木原コンビは、いじめを隠蔽した学校や、パワハラや不正を行っている企業に対して天罰を与える、“えぐり魔”として存在感を見せつけていく。大きな力は、使い方次第でどんなものにも変容する。これは現実世界も同様で、自分を活かすためにはどう生きればいいのか、自分はなんのために生きるのかという、人生のテーマに通じるものだ。また頼之の言葉にも、ぜひ注目してほしい。前話で覆面を取った頼之は恐ろしいビジュアルをしているが、限りない欲望を曝けだす人間に「あんたのほうがよっぽど化け物じみている」と言い放つなど、現実となぞらえてもずっしりとした重みがあり、ハッとさせられる人も多いことだろう。
そして幸子が上京し、高志と対峙。そこに頼之もやってきて、ついにナン丸、幸子、高志、頼之が東京で相まみえる。頼之が巨大な球体を操り、「パンッ」と大きな建物をエグる瞬間は第5話のゾクゾクするようなハイライト。頼之のカリスマ性や“⚫”の恐怖を改めて実感させられる回となるが、ナン丸と幸子のロマンチックなシーンも目にできる。
せっかく東京に来たのだからと、一緒にラーメンを食べにいくナン丸と幸子。ラーメンを「おいしい」と笑顔を弾けさせながら頬張る幸子は、“窓を開いた者”の呪縛から一瞬逃れられたようななんともキュートな表情をしている。それからは東京タワーが輝く夜景を前に、未来について話し合う2人。恋愛ドラマならば目一杯に胸キュンできるような美しいシーンだが、能力をあくまでポジティブに捉えるナン丸に対して幸子は常に否定的で、せつないひとコマとして胸に迫る。その秘密を打ち明けようとする幸子の様子から、これまでどれほど彼女が傷ついてきたのかが伝わってくるのだ。超常ミステリーの世界を描いた作品ながら、藤野が地に足のついた、私たちと同じ地平を生きる人物として幸子を演じており、幸子の幸せを願わずにはいられなくなる。幸子たちと対峙のうえ、高志を連れて行方をくらました頼之が、どのような行動に出るのか。ナン丸と幸子の関係性はどうなるのか…。ドラマ性も深まる「七夕の国」から、ますます目が離せない!
文/成田おり枝