映画祭出身の監督も凱旋!“映画祭の顔”オープニング作品から、新たな才能を発掘し続ける「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」の魅力に迫る
オープニング作品『初級演技レッスン』は、「登場人物の過去が徐々に明らかになっていくミステリー要素のある作品」(串田監督)
映画祭の幕開けを華やかに彩るオープニング作品も、毎年大きな注目を集めている。2019年は上田監督をはじめ、『カメラを止めるな!』のクリエイターが再結集した『イソップの思うツボ』。2022年は2018~20年と3年連続で受賞を果たした磯部鉄平監督による『世界の始まりはいつも君と』。2023年は20年に短編コンペ部門で受賞した藤田直哉監督による『瞼の転校生』など、同映画祭と関わりの深い監督たちの作品を上映してきた。いずれも創造性豊かな作品ばかりで、この映画祭からいかに新世代の才能が羽ばたいているかを実感できる。
今年のオープニング作品としてワールドプレミア上映が行われる『初級演技レッスン』は、時が止まったような廃工場で「初級演技レッスン」を開くアクティングコーチの蝶野穂積(毎熊克哉)が、即興演技を通して、父を亡くした子役俳優の一晟(岩田奏)や、一晟の学校の教師・千歌子(大西礼芳)の記憶に入り込み、彼らの人生を遡っていく物語。主演を務める毎熊は、2011年に短編部門奨励賞を受賞した『ケンとカズ』に出演していたほか、共演者の大西も2014年短編部門にノミネートされた『時ノカケラ』に参加しており、串田監督含め同映画祭が転機の一つとなった面々が一堂に会した作品と言える。
串田監督はオープニングを飾ることについて、「最高の花道を用意してもらった」としみじみ。というのも映画祭のルールでは、作品を応募できるのは長編制作が3本目までの監督となっており、「僕は今回のオープニング作品で監督3作目の長編作品となるので、SKIPシティでの上映は最後になります。映画祭を卒業する身としては、最高の舞台をご用意していただいたと考えているので、こちらも最高の作品で応えたいと思いました」と全身全霊を注いだ渾身作だ。
役者陣のアンサンブルに心を揺さぶられながら、意外な結末へと導かれるような作品だ。NHK大河ドラマ「光る君へ」の直秀役で、ワイルドかつ繊細な表情を見せて視聴者の心を掴むなど話題作への出演が続く毎熊は、黒ずくめの服装に身を包んだ蝶野のミステリアスな魅力を見事に体現。「一体、彼は何者なの?」と目が離せなくなること必至だ。そして一晟役に扮した岩田奏は、手探りの思春期をみずみずしく表現。千歌子を演じた大西は、凛とした佇まいのなかに寂しさをにじませ、すばらしい存在感を発揮している。3人の人生が交差していくことで、奇跡のような瞬間が訪れる本作。彼らの特別な時間を共有することで、エンタメの醍醐味までを味わえる感動作とオススメしたい。
「毎熊さん、大西さんからはすべてのシーンの撮影で刺激を受けていた」という串田監督は、「本作は、登場人物の過去が徐々に明らかになっていくミステリー要素のある作品に仕上がっているのですが、それは俳優の方々がキャラクターの心情を研ぎ澄まして、何気ない表情や仕草に反映させてくれたおかげ」と感謝しきり。映画祭の地元であるSKIPシティ内や川口市でも撮影を敢行しており、「撮影場所を貸してくださった方々の、地元の映画祭を盛り上げようという熱気」も印象に残っていると話す。「スタッフと共に川口市内をさまよいながら、撮影をしたいと感じた場所に飛び込みで交渉をするという方法でロケ地を決めて行ったのですが、皆様が『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭』のことをご存知で、撮影を快諾してくれました。ディープなロケ地の数々を楽しめる映画に仕上がっていると思います」と映画祭と地元が築いてきた絆が、大きな支えになった様子だ。
“卒業”を迎える串田監督だが、「この5年間で、SKIPシティを卒業した監督方がめざましい活躍をされていることは、とても刺激になっています」という。「今後は商業的な映画にも挑戦したいですし、議論を生むような作品も作りたいと考えています。理想は10年後、SKIPシティに審査員として帰ってくることです」と映画祭への愛着を口にしながら、さらなる飛躍を誓っていた。
日程:【スクリーン上映】7月13日(土)~21日(日)、【オンライン配信】7月20日(土)~24日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:https://www.skipcity-dcf.jp/