眞栄田郷敦&板垣李光人が“衝撃の出会い”を体現!『ブルーピリオド』原作のモデルでもある美術予備校の撮影現場に潜入
絵の練習に挑んだ過程が、そのまま映画に投影された特別な1作に
本作では、気迫や熱気を込めるために、絵を描く手元やシーンに吹替を一切使用しないことにこだわっている。この日の撮影現場には、絵画指導の海老澤功と、美術アドバイザーの川田龍の姿も見られたが、絵を描く姿勢や鉛筆の走らせ方、画材の扱い方など細かい所作まで、萩原監督が「いまの場面はどうですか?」と質問をし、違和感があればすぐに修正できる準備が整えられている。眞栄田はクランクインの半年前、高橋&板垣&森先輩役の桜田は約3か月前から絵の練習をスタートさせたとあって、撮影時には、海老澤と川田も役者陣の絵描きとしての芝居に「まったく違和感がない」と太鼓判を押していた。
プロデューサーによると、「眞栄田さんは、レッスン開始日には6時間もの間、一度も席を立たず、水も飲まず、ものすごい集中力で絵の練習に励んでいた」とのこと。また別のプロデューサーも「八虎と重なりますよね。『描けば描くほど、よくわからなくなってくる』と言いながら、できあがった絵を観てみるとものすごくうまい。集中すると、ものすごい領域まで到達する方なんだなと思います」と感嘆。絵画指導を担った海老澤が「この調子で頑張れば、本当に藝大に受かるんじゃないか」と称えるほど、彼の腕前は上達したという。また板垣は「どうしたら天才に見えるか?」と試行錯誤していたそうで、鉛筆の持ち方にも世田介の天才らしさをにじませた。これには川田が「絶妙!」と楽しそうな笑顔を見せていた。
吹替ナシで取り組んだ成果について、プロデューサーは「役者本人たちの熱量をあげることにもつながった。撮影現場を訪れた山口先生も、『実際に俳優さんたちが、絵を描いているのがとてもいい』とおっしゃってくださった。ものすごくうれしかったです」と期待以上のものだったとしみじみ。眞栄田も「八虎は絵を始めたばかりのところから、受験まで成長していく。僕自身もそれと照らし合わせながら、初めて画材を触った時の感覚なども大事にできた」と語るなど、キャスト陣が努力をして絵に向き合った姿が、そのまま映画にも投影された特別な作品となった。
生徒が描き終えた20枚ほどのデッサンが、教室にズラリと並んだ様子も圧巻だった。それぞれの絵から、その上達具合、受験生としてのレベル、キャラクターの個性までわかるなど、シーンやキャラクターごとに合わせた絵が用意されている。眞栄田も「すごい」とやわらかな笑顔を浮かべ、生徒役のキャストたちと興味深そうに絵を眺めていた。美術予備校を使用したロケ、実際に絵の練習をしたキャストの演技など、本物の迫力が観客に伝えるものは、とても大きなものになるだろう。「原作に惚れ込んだ」というプロデューサー陣だが、「目標を見つけて、一生懸命になる若者を実写として描きたいと思っていました。絵画を題材にした映画ですが、絵を描くということをスポ根のように描けたら、オリジナリティのあるものとして完成するのではないかと感じています」、「エネルギーがほとばしった映画。好きなものが見つからないという人や、一歩踏み出せないでいる方々にとって、『自分もなにかやってみよう』と背中を押せる作品になったらうれしいです」と作品への期待をアピールしていた。
取材・文/成田おり枝
※記事初出時、人名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。