米国ドラマシーンの“いま”を知る作品はこれだ!「SHOGUN 将軍」「一流シェフのファミリーレストラン」などディズニープラスの高品質ドラマをピックアップ
実在の女性経営者を描いたクライムドラマ「ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女」
サーチライト・テレビジョン製作の今作は、実在する女性起業家をモデルとしたトゥルー・クライムドラマ。スタンフォード大学を中退(ドロップアウト)し、医療ベンチャー企業「セラノス社」を立ち上げたエリザベス・ホームズ(アマンダ・セイフライド)。血液検査とテクノロジーを掛け合わせたセラノス社は瞬く間に注目を集め、ホームズは時代の寵児としてもてはやされるように。ホームズを演じたセイフライドは、第80回ゴールデン・グローブ賞テレビ部門(リミテッド・シリーズ/テレビ映画作品)で主演女優賞を受賞している。
昨今、Apple TV+の「WeCrashed ~スタートアップ狂騒曲~」や映画『ブラックベリー』(23)など、テック企業を舞台とした実録作品が多数作られている。また、トゥルークライムものとしては、実在する詐欺師をモデルとした「令嬢アンナの真実」(Netflix)、ストーキングの狂気を被害者自らドラマ化した「私のトナカイちゃん」(Netflix)など傑作が多い。「ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女」は、その二大人気ジャンルを掛け合わせ、狂騒の時代が生んだモンスターを描く傑作だ。
ホームズは、まるでスティーブ・ジョブスのような黒いタートルネック姿と落ち着いた声色で男性社会の医療業界に風穴を開けたが、彼女の経営プランこそが穴だらけだった。大学を中退(ドロップアウト)したホームズが、一滴の血液(ドロップ)をもとにビジネスを立ち上げ、やがて凋落(ドロップアウト)していく。ちなみに、投資詐欺罪で起訴された実在のホームズは有罪判決を受け、現在もテキサス州の連邦女性刑務所で服役中。
新人教師と子どもたちのユニークな日々を描く「アボット エレメンタリー」
「ザ・オフィス」に代表される、アメリカのテレビシリーズで人気を集める擬似ドキュメンタリー風シットコム。フィラデルフィアの公立小学校を舞台に、初等教育にパッションを傾ける新人教師ジャニーン(キンタ・ブランソン)と、彼女を取り囲むユニークな同僚や子どもたちとの日々を描く。「アボット エレメンタリー」は、InstagramやBuzzfeedで自作コメディビデオを公開していたブランソンのオリジナル企画で、脚本と主演も務めている。ちなみに、「一流シェフのファミリーレストラン」のアヨ・エデビリも脚本家やゲストスターとして参加している。2022年の第74回エミー賞では脚本賞、キャスティング賞、主演女優賞(キンタ・ブランソン)、助演女優賞(シェリル・リー・ラルフ)を受賞。今年1月に行われた第75回エミー賞では、コメディドラマシリーズ部門の主演女優賞をキンタ・ブランソン(「アボット エレメンタリー」)、助演女優賞をアヨ・エデビリ(「一流シェフのファミリーレストラン」)の2人の黒人女優が受賞し、エミー賞始まって以来の快挙となった。
おかしいんだけどなぜか気まずい、微妙な笑いのツボを突いてくるドラマは「クリンジ・コメディ」と呼ばれ、アメリカの人気ジャンルとなっている。新進気鋭コメディクイーンのキンタ・ブランソンは、公立小学校という絶妙な舞台で、個性派ぞろいの教師たちと現代的な子どもたちの日常を“むず痒い”笑いとして描きだす。次に挙げる「マーダーズ・イン・ビルディング」と共に、1日を笑って終えるコンフォート・ドラマとして定着している。