「頼之と山田孝之がシンクロ…!」「七夕の国」キャスト&監督がいまだから明かせるキャラクター作りの裏側

インタビュー

「頼之と山田孝之がシンクロ…!」「七夕の国」キャスト&監督がいまだから明かせるキャラクター作りの裏側

「ナン丸が頼之さんや幸子と真剣に向き合う最終話の山頂での一連が一番印象に残っています」(細田)

――撮影を振り返った時に、みなさんが一番印象に残っている撮影時のエピソードも教えてください。

キャストと監督による座談会を実施し、撮影秘話を明かしてもらった!
キャストと監督による座談会を実施し、撮影秘話を明かしてもらった!撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP’S)[細田] Koichi Takahashi[藤野] kazuma kimura(skavgti)[上杉] スタイリスト/Satoshi Yoshimoto[細田] Saori Katayama[藤野] RIKU OSHIMA[上杉]

細田「ナン丸は基本的に流される人間で、最初のうちは自分の意見すら持っていなかったと思うんです。そんな彼が、物語が進むに連れて自分なりの考えを持ち、それを口にするようになるんですけど、その段階を示す箇所が大きく3つあるんですよね」

上杉「(畳を叩くポーズをしながら)コレだっ!(笑)」

細田「それです。古くからの慣習やしきたりに固執した町民たちにナン丸が異を唱えるそのくだりと、(突然失踪した)丸神正美教授(三上博史)が姿を現す直前の夜のシーン、頼之さんと対峙する夜の山頂の祭りのシーンの3つが、本作の鍵を握る重要なポイントだと思います。そのなかでも個人的にはやっぱり最後の、ナン丸が頼之さんや幸子と真剣に向き合う最終話の山頂での一連が一番印象に残っていますね」

――あの時のナン丸からは必死さが伝わってきました。

細田「ナン丸は頭のなかがグチャグチャで、言っていることも無茶苦茶なんですよね。ただただ、幸子さんに“あっち側”に行ってほしくないという想いだけでまくしたてているんだけど、あの時の彼の顔は第1話の時とは明らかに違う。そこに監督がすごく手応えを感じてくださっていて。その事実が一番印象に残っています」

ナン丸の成長ドラマも見どころだ
ナン丸の成長ドラマも見どころだ[c] 2024 岩明均/小学館/東映 原作:岩明均「七夕の国」(小学館刊)

上杉「それは大事!」

瀧「あれは、ナン丸にしか投げられない直球ですよ。理屈ではなく、ただ気持ちをぶつけているだけですけど、ほかの人にはたぶんあれは言えない。(人間の感情を失ってしまった)頼之とは真逆の人間であってほしいという思いもあったので、あのナン丸を見た時はすごくグッときました」

――上杉さんが先ほど言われた町民たちとのシーンの、「丸神頼之はただの人殺しです」と訴える原作どおりのナン丸もよかったですね。

細田「あれはナン丸が自分の考えをはっきり口にするところだから外せないし、それだけにアフレコが大変だったんです(笑)。どれぐらいのテンションでセリフを言えばいいのか、なかなかつかめなかったですから。ほかに好きなセリフありましたか?」

上杉「ナン丸が町民たちに投げかける『かたくなに耳をふさぎ、考えることをやめるのって罪じゃないですか?』っていうセリフ!あれは丸川町や時代に関係なく、閉塞的な日本を捉えた、島国だからこそ出てきたもの。本作の肝になる言葉でもあるし、僕は好きですね」

藤野「私はあのナン丸のセリフを町民の1人として聞いていたので、ドキッとして。不可解な事件を環境のせいにしていた幸子が“自分も考えるのをやめていたな”と気づく印象的なシーンでしたけど、“私も周りの言動や環境に流されずに自分の考えをしっかり持たなきゃいけないな”と思いながらあのセリフを聞いていました」

球体の力で日本中を恐怖の渦に巻き込む男、丸神頼之
球体の力で日本中を恐怖の渦に巻き込む男、丸神頼之[c] 2024 岩明均/小学館/東映 原作:岩明均「七夕の国」(小学館刊)

上杉「でも、今回はやっぱり、頼之さんに驚きました。(特殊なマスクを被っているから)実際の表情は見えないのに、その存在だけで情報を伝えたり、相手の心を動かしたりするパワーがスゴくて。それに引っ張られる時もありました」

藤野「私もビックリしました」

上杉「顔も目も見えないですからね。僕らが普段、映画やドラマでやるお芝居は顔が見えるものが9割以上で、知らないうちに表情に頼ってしまったりするんだけど、あの頼之さんには『そうじゃないんだよ、オマエ』ということを言われたような気がしました」

瀧「俺、最後に山田さんに聞いたんですよ」

上杉「えっ、なにを聞いたんですか?」

瀧「さっきも話に出た山頂での一連を撮っている時に、頼之と山田さんがシンクロしきって、台本の表現を超え始めたんです。しかも周りの人にも影響を与えて、なにか特別なゾーンに入った数週間があって。スゴいものを見たなという実感もあったから、すべて撮り終わったあとに、『頼之の感情をどうやって周りの人たちに伝えているんですか?』ってバカみたいに聞いてみたんです」

上杉「純粋に気になります。どうしてるんですか、あれ?なんておっしゃってました?」

瀧「山田さんは『単純に頼之の気持ちでセリフを言っているだけで、あまり意識してない』って言ってました」

上杉「参考にならないな~(笑)」

瀧「でも、僕はモニターで見ているから気づいたけれど、結構微妙なことをやっていて。動きも大してないから、まさに声だけですよ。優しくなる前はちょっと強めに発したり、淡々としてるんだけど、すごく狭い範囲で声の強弱をつけているからスゴい!って思いました」

ドラマ「七夕の国」を手掛けた瀧悠輔監督
ドラマ「七夕の国」を手掛けた瀧悠輔監督撮影/興梠真穂

「何気ない日常のシーンにも注目してほしいです」(藤野)

――みなさんが思う「このシーンに注目しほしい!」「ここは絶対に見逃さないでほしい!」といったオススメのポイントを教えてください。

上杉「繰り返しになるけれど、僕はやっぱり頼之さんですね(笑)」

細田「山田さんがいないのに、頼之さんの話題がこんなに出るのはスゴいですね(笑)」

上杉「だって俺、本当にビックリしたもん!」

細田「確かにそうですね。ただ、あのスゴさは観た人にしかわからない」

上杉「俺たちは実際にそのスゴさを現場で目撃したけど、映像で見てもスゴかった」

藤野「そうですね」

上杉「あれは絶対に見てほしい」

藤野「私は(実際の社会と地続きの)何気ない日常のシーンにも注目してほしいですね。私たち俳優部がそこで着飾ることなく、自然なお芝居でリアルに反応しているから、非現実的な描写があっても観た人が共感できると思うんです」

瀧「全編にわたって、細かい仕掛けもいろいろしてるしね。例えばタイトルバックの、細かいVFXの一つ一つにもちょっと意味のあることをしていて、最後まで観た時にリンクするようになっている。そこも含めた超常ミステリーなので、最後まで観ていただけたらうれしいですね」


取材・文/イソガイマサト

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