宿敵アポロとの友情の物語がはじまる『ロッキー3』(82)
ヘビー級王者としてベルトの防衛に成功しながらも、闘争心を失い引退を決意したロッキーが描かれた『ロッキー3』。血気盛んな若きボクサーのクラバー・ラング(ミスター・T)から戦いを申し込まれ、あえなくKO負け。さらに長年苦楽を共にしてきたミッキー(バージェス・メレディス)が心臓発作でこの世を去ってしまう。失意のどん底に落ちたロッキーに手を差し伸べたのは、かつての宿敵アポロ。そしてアポロがセコンドを務め、ロッキーはクラバーへの雪辱戦に挑むこととなる。
クラバー役を演じたミスター・Tは陸軍を除隊後にボディガードとして働き、NBCのテレビ番組内のコンテストでスタローンに発見され、この大役に大抜擢。その後は人気ドラマ「特攻野郎Aチーム」に出演し、プロレスラーとしても活躍した。また、サンダー・リップス役としてハルク・ホーガンも出演。これ以降、プロの格闘家などを配した敵役のキャスティングにも注目が集まるように。
同年にもう一つの代表作である『ランボー』(82)が公開されたスタローンは、第2作に続いて本作でも自ら監督と脚本を兼任。作品は当時シリーズ最大のヒットを記録しただけでなく、主題歌の「アイ・オブ・ザ・タイガー」が第55回アカデミー賞歌曲賞にノミネート。この第3作から始まった宿敵アポロとの友情の物語は、のちにアポロの息子アドニスを主人公にした「クリード」シリーズへと続いていくこととなる。
亡き友のために異国の地へ乗り込む、伝説の第4作『ロッキー4 炎の友情』(85)
先述の「ランボー」シリーズの成功も相まって、肉体派アクションスターとして絶対的な人気を獲得したスタローン。シリーズのマンネリ化も言われるなか、第3作のヒットを受けて制作された『ロッキー4 炎の友情』は、批評家からの酷評とは裏腹に大ヒットを記録。シリーズのなかでも“別格”の第1作に次ぐ高い人気を集めている。
ソ連からやってきたアマチュア・ヘビー級王者で“殺人マシーン”の異名を持つイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)とのエキシビジョンマッチに、ロッキーの代わりに出場したアポロは、リングの上で容赦ないパンチを浴びせられ命を落とす。亡き友の無念を晴らすため、そしてボクシングが殺し合いの道具ではないことを証明するためにロッキーはソ連へと乗り込み、完全アウェーのなかでドラゴとの戦いに臨んでいく。
東西冷戦を盛り込んだストーリーに、空手家から俳優へと転身したドルフ・ラングレンのアクションスターとしての飛躍、そして直接的なつながりを持つ『クリード 炎の宿敵』(18)のヒットなどを受け、近年再評価が進められた本作。今回劇場公開版とあわせて収録される『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、91分のオリジナル版のうち42分が未公開シーンへ差し替えられ、装いも新たに生まれ変わったアナザーバージョン。2本続けて観比べてみるのも一興だろう。