なぜ“命を大切に”なのか?「アンナチュラル」「MIU404」、そして『ラストマイル』×米津玄師が与えるメッセージ
2018年放送のドラマ「アンナチュラル」、2020年放送のドラマ「MIU404」の世界と交わり、新たな物語が生みだされる映画『ラストマイル』が大ヒット上映中だ。そんな本作に主題歌として花を添えるのは、米津玄師。「アンナチュラル」、「MIU404」に引き続き、映画でも主題歌「がらくた」で物語を盛り上げている。今回は作品の内容と共に、各主題歌の魅力を改めて紹介していく。
日本の音楽シーンを牽引する米津玄師
いまや幅広い世代から支持されるアーティスト、米津玄師。そんな彼のキャリアのスタートは、ボーカロイドを使用して音楽制作をする、いわゆる”ボカロP”。そこから本人名義のアルバム「diorama」でソロデビューを果たし、2016年よりソニー・ミュージックレコーズに所属している。
近年は、2022年公開の映画『シン・ウルトラマン』の主題歌として「M八七」を提供したほか、2023年に公開されたスタジオジブリの映画『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」を書き下ろし。さらには、「NHK2020ソング」として、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に「カイト」で嵐とコラボレーション。米津は作詞&作曲を務めたことでも知られている。
このように、名だたる作品やプロジェクトの主題歌を多数手掛けている米津。そういう意味でも、日本の音楽シーンを牽引している一人と言っても過言ではない。
人を喪ったことへの悲しみや想いを綴る「Lemon」
そんな米津の代表作の一つとも言える「Lemon」が主題歌として起用されたのは、いまなお根強い人気を誇るドラマ「アンナチュラル」だ。同作は、日本に新設された死因究明専門のスペシャリストが集まる「不自然死究明研究所(UDIラボ)」が舞台となり、“不自然な死”(アンナチュラル・デス)を遂げた死体と向き合い、死因を究明していくといった内容。作中で「夢ならばどれほどよかったでしょう」というフレーズが流れだすと、ドラマの深みはグッと増す。UDIラボの奮闘ぶりと「Lemon」は、その死が“誰かにとって大切な人の死”であるということを思いださせてくれた。
「Lemon」のMVの再生数は、YouTubeにおいて邦楽最多の8億7600万回に上る(※8月30日現在)。ヒット曲ばかりの米津作品のなかでも頭一つ抜けた1曲なのだ。
過去にがんじがらめになる相棒と前に進む「感電」
「MIU404」は、警察内部で“なんでも屋”と揶揄されながらも、犯人逮捕にすべてを懸ける初動捜査のプロフェッショナル「機動捜査隊(機捜)」が舞台の物語。普段は覆面パトカーで地域をパトロールし、110番通報があれば事件現場に急行。24時間というタイムリミットのなかで、事件を解決するさまが描かれている。機動力と運動神経に優れており、野生のカンを頼りに行動する伊吹藍(綾野剛)と、対して、理性的な一面を持つ観察眼と社交性に長けるも、ある過去を背負う志摩一未(星野源)。そのバディっぷりや奮闘に没入させられる物語だ。
「MIU404」の主題歌「感電」では、そんなドラマのなかで描かれている瞬間、瞬間のきらめき、そして犯人や被害者と向き合っている様子を表現。伊吹と志摩のガムシャラな日々が描かれているようにも感じられる、パワフルな1曲となっている。