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デビュー直後から快進撃を続ける奥平大兼が『Cloud クラウド』で見せつける新境地

コラム

デビュー直後から快進撃を続ける奥平大兼が『Cloud クラウド』で見せつける新境地

初主演作『君は放課後インソムニア』では、不眠症の高校生に

石川県七尾市を舞台としたオジロマコトの人気コミックを映画化した『君は放課後インソムニア』(23)は、美しい街のなかで同じ秘密を持った高校生の男女が繰り広げる青春ストーリー。森七菜とダブル主演で、奥平はこれが映画初主演。使用されていない高校の天文台で出会った曲伊咲(森)と中見丸太(奥平)。不眠症の2人は意気投合するが、天文台の無断使用が発覚し、引き続き天文台を使用するため天文部を復活させることに。

星の写真を撮り合う2人の爽やかなやりとりが初々しく、やがて訪れるエンディングがせつない。演技派で知られる2人の揺れ動く心のリアルさ、繊細な表現に魅了される。奥平は『君は放課後インソムニア』、『あつい胸さわぎ』、『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』、『ヴィレッジ』の演技が評価され、TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞した。

eスポーツに没頭するヤンチャな高専生に『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』

「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」にミステリアスな生徒役で出演し、黒幕最有力としてドラマ考察を一気に盛り上げた奥平。芦田愛菜や加藤清史郎といった同世代のベテランと並んでも、引けを取らない役者に成長した姿を見せた。『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』(24)は、日本映画で初めて本格的に「eスポーツ」を取り上げた作品だ。モデルは徳島の高等専門学校に在籍した実在の人物で、鈴鹿央士とダブル主演。スクリーンでゲーム映像を見せる難儀を持ち前の演技力でカバーしている。

日常に楽しみのない翔太は「全国高校【eスポーツ】大会メンバー大募集」の勧誘を見て、ゲーム未経験ながらこれに応募。ゲーマーの先輩に指導され、東京での決勝戦を目指す。天才ゲーマーで真面目な先輩が鈴鹿、金髪にピアスとヤンチャな見た目でゲームは初心者の翔太が奥平の役どころ。まるで気の合わない彼らがしだいに一つになっていく様は、スポ根映画のような爽快感を放っている。

『Cloud クラウド』で見せる、新たな奥平大兼の姿とは

駅のホームで、謎の男性(松重)からなにかを受け取る佐野
駅のホームで、謎の男性(松重)からなにかを受け取る佐野[c]2024 「Cloud」 製作委員会

国際的に活躍する黒沢清監督と菅田将暉が初めて組んだサスペンススリラー『Cloud クラウド』。“転売ヤー”として真面目に働くうち、知らず知らず周囲に敵を作り窮地に追い込まれてしまう、菅田扮する吉井の受難を描く。

本作で奥平が演じるのは、都会から郊外に転居した吉井の助手を務めることになる現地の青年、佐野。登場人物すべてを敵に回してしまう吉井に、恋人よりも根気よく付き合う謎めいた人物でもある。吉井に恨みを持つ人物を演じた、窪田正孝、荒川良々、岡山天音といった共演者たちが集団で振り切った狂気を見せるなか、最年少の奥平は誰よりもクール。吉井にとって本当の味方なのか、はたまた彼も恨みを持っている一人なのか。佐野の、いまいち掴みどころのない飄々とした雰囲気に翻弄されたまま物語は進んでいく。彼はいったい何者なのか、常に余裕を見せている姿が逆に恐ろしい。

そんな余裕がにじむ奥平だが、現場では黒沢監督から直に「菅田将暉を超えてほしい」との指令を受けて、かなり緊張していたんだとか。とはいえ、撮影のないオフの時間は菅田や岡山と一緒にロケ地の街を散策していたそうで、大先輩たちを相手に気後れしない、大胆な性格は健在だったよう。

次にどんな姿を見せてくれるのかワクワクさせられる!

ヒューマンドラマ、社会派、ラブストーリー、アクション、サスペンス…どんなジャンルも自然体でこなしてしまう役者、奥平大兼。21歳になったばかりでこのフィルモグラフィは破格!次にどんなテーマを選ぶのかすら未知数だが、『君は放課後インソムニア』『PLAY!』でダブル主演を果たした彼にやがて訪れるであろう単独主演映画の公開に期待したい。


文/高山亜紀

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