横浜流星主演『正体』の現場に潜入!間近で目撃した森本慎太郎、山田孝之の超絶演技と藤井道人監督の演出理論に迫る
同日撮影とは思えない!横浜流星と山田孝之の“静”と“動”の演技に驚愕
続く撮影シーンは、警察署の取調室で鏑木と山田孝之演じる刑事の又貫が対峙する緊迫感あふれる場面だ。無実を訴える鏑木と、彼の言動の裏に隠された真実を見抜こうとする又貫。対照的な2人の演技がぶつかり合い、現場の空気はいっきに張り詰めたものとなった。別シーンとなる拘置所の取調室では、先ほどとは打って変わって、落ち着いた様子で話す鏑木と又貫の姿が撮影された。この場面は、言葉にはならない独特の緊迫感が2人の間に漂い、観る者の想像力を掻き立てる本作屈指のシーンとなっている。
鏑木に脱走されてしまった責任を背負い、彼を追う又貫を演じた山田孝之について藤井監督は「僕にとって、映画人のなかでもとても緊張する俳優さんです。『デイアンドナイト』という作品で、プロデューサーとして入ってくれた彼の背中を見させてもらいました。彼の生き方や未来の映画界に関する考え方を僕は継承したいと思っています」とそのリスペクト具合を滲ませた。
続けて、本作の大切な役割を山田に託したことについては「観客は又貫の目を通して鏑木の正体に迫っていく。そういう大切な役に、最大にリスペクトする山田さんをダメ元でカフェに呼びだしてオファーをしました。やっぱり山田さんはいまでも現場で演出する時、とても緊張します。今回、又貫役を山田さんにやってもらえて、一つ夢が叶ったような気持ちです」と感無量の面持ち。
この日撮影された横浜と山田の2つのシーンは、物語内ではかなり時間が経過しているため、鏑木と又貫の関係性の変化もしっかり感じさせるような演じ分けが行われており、それぞれの演技力の高さを改めて感じることができた。撮影を終えて藤井監督は、「あそこ(拘置所の取調室)が、2人が会話する最後のシーンなんです。それまではずっと、追う者と追われる者。たぶん、そんな立場だった2人にしかわからない空気があると思います。流星が一番尊敬してる俳優も山田さんなので、たぶんその思いが彼の演技のなかにもすごいあふれてたと思います。又貫の役って、『葛藤してるぜ、俺』っていうふうに大仰に演じることもできちゃうんですが、それをせずに一番ストイックなやり方で演じてくれました」と撮影されたシーンに自信を覗かせていた。