横浜流星主演『正体』の現場に潜入!間近で目撃した森本慎太郎、山田孝之の超絶演技と藤井道人監督の演出理論に迫る

インタビュー

横浜流星主演『正体』の現場に潜入!間近で目撃した森本慎太郎、山田孝之の超絶演技と藤井道人監督の演出理論に迫る

横浜流星と「一緒にOKテイクを導きだしていく」気持ちで紡いだ『正体』への思い

長編劇場映画だけでも、横浜流星とは『青の帰り道』(18)、『ヴィレッジ』(23)に続き本作で3回目のタッグとなる藤井監督。「実はこの映画が『青の帰り道』に続く作品になるはずだったんです。原作に書かれていることが、当時の僕と流星がやりたかった題材にすごく近くて、『これをやろう』っていうふうになったのが4年前。そこから紆余曲折あって、いま撮っているっていう感じです」と、本作が、横浜を主演として迎える最初の長編作品になるはずだったことを明かした。

今回で長編映画3度目のタッグとなった横浜流星と藤井道人監督
今回で長編映画3度目のタッグとなった横浜流星と藤井道人監督[c]2024 映画「正体」製作委員会

そのうえで、いま本作を撮ることになったことについては「本当に良かった。この作品では、流星が恰好や人格を変えていろんな人に会っていく。その一つ一つの精度というか、“人間になりきる力”がやっぱりもう圧倒的にすごくなっていて、今回は本当に楽しく撮らせてもらっています」と、4年前からお互いがスキルを磨き、相手を知り尽くしたうえで本作に臨むことができたと振り返る。


様々な作品を共に作り上げ、本作でも脚本制作の段階から一緒に向き合ってきた藤井監督と横浜。そんな2人の信頼関係は、作品の演出面にも出ているとのこと。「彼自身がどれだけすばらしいパフォーマンスをしてくれるのかがわかってる分、“一緒に練り上げていける”というか、お互い妥協しないでOKテイクを導きだしていくみたいなことができています。俳優への演出について『どう演出してあんな芝居になったんですか?』とよく聞かれるんですけど、流星にだけは演出のアプローチがまったく違うんです。ほかの俳優には、(演じる役の)感情の話をよくするんですけど、流星にとってもうそこは脚本制作の段階で終わっているので『いま、横で何ミリだから、その表現じゃ伝わらないよ』とか『そっちの画はいま使わないから間をずらしてくれ』とか、撮影上のテクニカルなことまで共有できる。そういうふうにできるのはたぶん流星だけですね」。

横浜流星と3度目のタッグにして作り上げた最高のエンタメ作品

以前、『ヴィレッジ』のインタビューで藤井監督は、各登場人物の生い立ちを書いたキャラクターシートを俳優たちに配っていると話していたが、もちろん本作でも用意したとのこと。「必ずしも原作と映画の内容が一緒ではないのですが、今回も分厚いキャラクターシートが全キャスト分あります。キャラクターの血液型や誕生日月を、演じる役者さんと同じものに設定するなど共通点を作ったりすることもあります。俳優部の方も、なにか一つでも自分と演じる役の接地面があると、役をグッと引き寄せてもっと深く掘れることがあると僕は信じているので、毎回全キャスト分作っています」。

あらゆる現場を共に潜り抜けてきた仲だからこそ作れた1本
あらゆる現場を共に潜り抜けてきた仲だからこそ作れた1本[c]2024 映画「正体」製作委員会

今回、特にこだわってキャラクターシートを作ったのは、鏑木以外のメインキャラクターである沙耶香(吉岡里帆)、和也、舞(山田杏奈)、又貫の4人だという。「彼ら4人には全員テーマとなる色があります。そして、彼らが象徴する緑と赤と青っていう“光の三原色”のセンターは白なんです。そういうことをこの映画のなかで表現できたらいいなと思って作っています。また今回は、作品全体のメタファーとして“水”を多用しています。“生命の根源”だったり、“情報の流れ”とか“人の流れ”とか、そういういろんなものに掛かるものを水として使っていて、それがこの登場人物たちになにかしら(要素として)入ってたりします」。

最後に藤井監督は「ちょっとだけ先に延びてしまいましたが、たぶん『正体』は一番脂が乗ってる時期に、最高のエンタメを僕と流星で作れているんじゃないかなと。しっかり『これは観たほうがいいよ。めちゃくちゃおもしろいから!』と楽しんで観てもらえるものを作れている自信があります」と語り、本作への自信を覗かせた。

取材・文/編集部

作品情報へ

関連作品