「家族に会いたくなる」「誰にでも当てはまる」…吉沢亮が青年の葛藤を体現した『ぼくが生きてる、ふたつの世界』にみる物語の普遍性
演技とは思えない、自然な親子の関係性がグッとくる
きこえる世界ときこえない世界で板挟みになる多感な息子を体現した吉沢に対し、共にろう者の俳優である忍足亜希子と今井彰人が温かみを持って演じている両親の姿も人間味があり印象的だ。
「障がいを抱えながらも、常に笑顔で子どものことを第一に応援する姿勢とかける言葉には、子を持つ親として心に刺さった」(40代・男性)、「お母さんの笑顔がとてもステキで、大になにを言われても大切に想う気持ちが伝わってきました」(40代・女性)と言及されているのが母の明子。思春期を迎えた息子に疎まれてもなお明るく接する一方で、その裏ではせつない表情も浮かべるなど、顔つきやしぐさで息子への深い愛を丁寧に表現している。
一方の「登場シーンは少なかったが、父親の存在の大きさを感じた」(50代・女性)という父、陽介は「大は大丈夫だよ」と明子に声をかけたりと一歩後ろから家族を見守っており、人生に迷う大の背中を押すなど、要所で存在感を発揮。
「(陽介の)過去の話を歩きながら語るシーンが、本当の親子がする会話のテンポに思えてとてもすてきでした」(50代・女性)、「愛情深さと力強さ、たくましさ。いろいろな苦悩を経験していまがあるのだろうと感じました」(30代・女性)といった言葉が示しているように、家族の歴史を感じさせるリアルな距離感も見事で感動を誘う。
「自然な親子の姿でした。愛情深い両親の姿が伝わってきました。とてもすばらしかったです。ろう者の役者さんが演じられていて、リアリティがあって、より感情移入できたと思います」(40代・女性)
「まず2人が本当の夫婦にしか見えませんでした。夫婦2人の手話での会話シーンはとてもほのぼのとした雰囲気で、息子の写真を撮る様子が幸せそのものを表現していると感じました。吉沢亮さんとの距離も感じませんでした」(50代・女性)
吉沢は忍足、今井と共に手話での稽古を2か月にわたり行ってから撮影に臨んだそうで、手話はもちろん、その関係性がにじみ出た演技には「ナチュラルだった」との声が多く寄せられていた。
「きこえる世界・きこえない世界がテーマではあるけれど、相手に伝える、気持ちを届けることがどういうことなのか、考えさせられる作品」(30代・女性)
「ふたつの世界に胸が張り裂けそうになりながらも、両親と同じ世界にいる人たちに出会い、理解を深め成長していく姿が描かれていてよかった」(30代・女性)
「人生のステージで自分の環境の捉え方は変わっていきます。コーダでもコーダでなくても悩みはあるだろうし、それに気づいた大の人生を賞賛したいです」(40代・女性)
自分の住む世界や周囲とどうやって向き合っていくのか、1人の青年の成長を軸に普遍的な物語を描いた『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。「子を持つすべての親に、親と子の愛情のすばらしさを再認識できる映画として薦めたい」(40代・男性)、「観たあと家族に会いたくなる映画。親視点でも子ども視点でも感じるものがある」(40代・女性)など、親を持つ子、子を持つ親、多くの人の心にスッとしみ入るような感動を与えてくれることだろう。
構成・文/サンクレイオ翼