TOHOシネマズの全国8スクリーンに導入され、迫力にあふれたサウンドを提供している“轟音シアター”。サブウーハーを設置し、周波数帯を繊細に調整して大音量を心地よく体感できる映画体験は、その誕生以来、多くの観客を魅了してきた。現在は初企画として、世界最大級のオーディオストリーミングサービス Spotifyと協力し、【名曲映画を、浴びつくそう。】と題した特別上映会を開催中。すでに『ONE PIECE FILM RED』(22)や、世界に熱狂的ファンを持つアニメーション監督、細田守の人気作『竜とそばかすの姫』(21)が上映され、好評を博した。そもそも轟音シアターは、通常のシアターとはどういった点が違うのだろうか?『竜とそばかすの姫』の音楽監督であり、様々な映画、アニメーション、ドラマ音楽を手掛けてきた岩崎太整に、轟音シアターならではの特性やすごさについて話を聞いた。
「“音響高解像度シアター”という表現もいいのかなと」
まず“轟音シアター”という言葉を聞いて、なにを思い浮かべるだろう?文字通り、大きな音で上映される劇場と解釈する方が多いのでは。確かに、轟音シアターで上映される映画は通常の劇場のそれより音量が大きい。しかし、単純に音量を上げているだけではない。「映像に解像度があるように、音にも解像度があります。画像であれば画素を上げるという作業がありますが、それを音で行なうわけです。だから“音響高解像度シアター”という表現もいいのかなと思います」。解像度が高いので、音量を上げれば、様々な音がくっきりと聴こえ、それによって臨場感が高まるというわけだ。
『竜とそばかすの姫』で具体例を挙げていただいた。本作は、インターネットの仮想世界<U>で歌姫ベルとして人気者になった女子高生、すず(声:中村佳穂)の成長を、壮大なスケールで描く青春アドベンチャー。「中盤に主人公のすずが、川沿いを歩きながら作曲をするシーンがあります。歩きながら、ぼそぼそつぶやくように歌を口ずさむ。あのシーンではセリフを一音、一音、細かく調整しています。子音を上げて母音を下げる、というような。ぼそぼそとはしていますが、聴こえない音がないようにエンジニアと共に調整しました。音楽が生まれる瞬間というものをリアルに体感して欲しかったんです。映画の中では地味なシーンですが、川の音や木々の音があり、その中に歌がある。その一音、一音をちゃんと聴こえるようにすることはこだわりました」。大きな音だけではなく、小さな音の繊細さにもこだわり、それをきちっと響かせる。その徹底的に調整された音の表現を再現できる轟音シアターは、その豪快な名前のイメージとは裏腹に、奥深さもあるのだ。
映画館にはそれぞれ個性があり、空間設計もそれぞれに異なる。となると、音の響きも当然違ってくるのではないだろうか。「もちろん、劇場によって音の鳴り方は異なります。面積や天井高、スピーカーの数で違ってきますから、劇場の特性に合わせて微調整するということは必ず出てきますね。またシネコンの多くは商業施設の中に入っていますから、お隣のパスタ屋さんから苦情が来ない程度の音量にするという調整も必要でしょう(笑)。その点、TOHOシネマズは新しい劇場が多いし、轟音シアター用の設計もされているようです」。新たな映画館ができる度に、そこによりいい上映環境が作られるもの。音響の点で映画館の進化をはっきりと感じることができるのはうれしい。
上映会詳細はこちら:https://www.tohotheater.jp/event/spotify-goon2024.html
■今後の上映ラインナップ
・10月24日(木)19:00~ 『BLUE GIANT』
・11月28日(木)19:00~ 『セッション』(字幕版)
・12月26日(木)19:00~ 『ラ・ラ・ランド』(字幕版)
■実施劇場
・TOHOシネマズすすきの
・TOHOシネマズ池袋
・TOHOシネマズ上野
・TOHOシネマズ立川立飛
・TOHOシネマズなんば
・TOHOシネマズららぽーと門真
・TOHOシネマズセブンパーク天美
・TOHOシネマズららぽーと福岡
岩崎太整
音楽家。映画、ドラマ、CMなど数多くの作品で音楽を手掛ける。代表作に『竜とそばかすの姫』(21)、『モテキ』(11)、アニメ「血界戦線」シリーズ、Netflixシリーズ「First Love 初恋」、Netflixシリーズ「全裸監督」など。『竜とそばかすの姫』では第45回日本アカデミー賞最優秀音楽賞、第36回日本ゴールドディスク大賞サウンドトラック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞、『モテキ』で第35回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞している。