『竜とそばかすの姫』音楽監督が語る、知られざる“轟音シアター”のすごみ「映像に解像度があるように、音にも解像度がある」

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『竜とそばかすの姫』音楽監督が語る、知られざる“轟音シアター”のすごみ「映像に解像度があるように、音にも解像度がある」

「どの座席に座っても体感としては問題ありません」

轟音シアターの新企画【名曲映画を、浴びつくそう。】は、その名のとおり音楽の主張が大きい映画が選ばれている。『竜とそばかの姫』もそのひとつだが、となればやはり音楽の点でも解像度のすごみが発揮された曲が気になってくる。「それはもう、クライマックスの『はなればなれの君へ』ですね。すずがベルというアバターを外して、普通の高校生の姿に戻って歌う場面です。途中でオーディエンスのシンガロング(アーティストとオーディエンスが共に歌うこと)が重なりますが、この音声はオーディエンスの歌声をSNSで募集して、それを重ねました。ちょうどコロナ禍で行動制限が敷かれていた時期でしたし、すずの鬱屈を描いた映画の世界観にも合致する。そこで寄せられた、2,000人強くらいの歌声のトラックが重なっていますが、映画の観客がシンガロングの輪の中にいるように音響を設計しています」。

実際に轟音シアターでこの曲を体感してみたが、確かにすごい。音域の異なるシンガロングの重層構造が迫力と共に迫ってくる。まさしく、コンサート会場にいるような臨場感。そこでふと気になったことがある。それは、同じ劇場でも座席の位置によって音が違ってくるのではないか?という疑問だ。「座席によって音の聴こえ方が違うというのは当然ありますが、どこに座っても体感としては問題ありません。ライブ会場でのポジションにも共通しますが、聴こえてくる音の色は違っても品質は同じです。以前、映画館の音響調節を行ったことがありますが、その時は映画館の営業終了後の深夜に、前や後ろの隅に席を変えながら確認しました。隅の席のほうが取り残されるようなことは絶対に避けたかった。轟音シアターでも、体感をキープするように音響調節がなされているようです」。真ん中の席であろうと、端の席であろうと、聴こえ方は違っても臨場感は共通する。それが轟音シアターの特徴でもあるのだ。

全国8スクリーンに導入されている、TOHOシネマズの轟音シアター
全国8スクリーンに導入されている、TOHOシネマズの轟音シアター

映画を観る場所は映画館だけとは限らない。DVDや配信と、それをかけるメディアは多様化している。「それに合わせて、僕らも音響設計はまったく変えています。例えば、映画館にはXカーブが存在するため、ある程度高音域を上振れさせていますが、配信でそのままかけると高音がキンキンと響いてしまうので、上振れさせる前に戻したり。様々なプラットフォームがあり、それぞれで映画を観る人がいる以上、そういう調整は必要になってくるでしょう」。とはいえ、映画ファンの理想は、やはり映画館で観ること。作り手が意図したものを、より近いかたちで体験するには、それが理想的なプラットフォームなのだから。「映画制作時に僕らがダビングステージで聴いたものに、可能なかぎり音を近づけられるのが映画館のよさです。先に挙げた『はなればなれの君へ』の歌唱シーンに関しては、劇場でなければ絶対にすごみを体感できないし、音響のよい映画館であればあるほどいいと思います」。

『セッション』のデイミアン・チャゼル監督が手掛けた『ラ・ラ・ランド』(16)。ハイウェイを封鎖して撮影された冒頭シーンはあまりにも有名
『セッション』のデイミアン・チャゼル監督が手掛けた『ラ・ラ・ランド』(16)。ハイウェイを封鎖して撮影された冒頭シーンはあまりにも有名ラ・ラ・ランド [c] 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

今後も【名曲映画を、浴びつくそう。】では音に優れた、様々な作品が上映される。10月24日(木)には、世界的ジャズビアニストの上原ひろみが音楽を担当した『BLUE GIANT』(23)、11月28日(木)には、デイミアン・チャゼル監督をスターダムに押し上げた衝撃作『セッション』(14)などが控えているが、ラインナップの中で、岩崎さんが注目している作品を挙げていただこう。「『ラ・ラ・ランド』(12月26日上映)ですね。冒頭のハイウェイでのミュージカル・シークエンスは本当にすばらしいと思います。ミュージカルでは歌や音楽だけを録って流すのはよくありますが、あの場面では、ハイウェイの騒音もきちんととらえていて、その場の空気感がよく出ている。実際に車の上や路上で人が本当に歌ったら、こんな音になるだろうという生々しさを感じますね。この場面だけでもお金を払う価値があると思います」。


『竜とそばかすの姫』などで知られる音楽家、岩崎太整
『竜とそばかすの姫』などで知られる音楽家、岩崎太整

音響を完璧に近いかたちで再現した映画体験、さらには映画館体験ができる轟音シアター。この機会に、一度足を運んでみてはどうだろう。

取材・文/相馬学

【名曲映画を、浴びつくそう。】Spotify / 轟音シアター特別上映会
上映会詳細はこちら:https://www.tohotheater.jp/event/spotify-goon2024.html

■今後の上映ラインナップ
・10月24日(木)19:00~ 『BLUE GIANT』
・11月28日(木)19:00~ 『セッション』(字幕版)
・12月26日(木)19:00~ 『ラ・ラ・ランド』(字幕版)

■実施劇場
・TOHOシネマズすすきの
・TOHOシネマズ池袋
・TOHOシネマズ上野
・TOHOシネマズ立川立飛
・TOHOシネマズなんば
・TOHOシネマズららぽーと門真
・TOHOシネマズセブンパーク天美
・TOHOシネマズららぽーと福岡

岩崎太整
音楽家。映画、ドラマ、CMなど数多くの作品で音楽を手掛ける。代表作に『竜とそばかすの姫』(21)、『モテキ』(11)、アニメ「血界戦線」シリーズ、Netflixシリーズ「First Love 初恋」、Netflixシリーズ「全裸監督」など。『竜とそばかすの姫』では第45回日本アカデミー賞最優秀音楽賞、第36回日本ゴールドディスク大賞サウンドトラック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞、『モテキ』で第35回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞している。

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