マドンナが切り開いた大地に道を作ったガガ
1980~90年代のポップ&ロックを代表するアーティストであるマドンナは、ファッションを重視した先鋭的な映像と音楽を打ちだした先駆者。人気に火をつけたのが性的マイノリティのコミュニティだったこともあり、LGBTQ+の人権活動に積極的な支援を行っているという点も共通している。ガガのヒット分析をする際によく「ガガはマドンナが切り開いた大地に道を作った」と評されているが、まさにその通り。マドンナが作った道筋がなければ、ここまでスピーディに活躍の幅が広がらなかっただろう。
ガガが“グッチ一族を崩壊に導いた”とされるパトリツィアを演じた、2021年の『ハウス・オブ・グッチ』を観て、俳優マドンナの代表作である『エビータ』(96)を思い出した人もいたはず。「毒婦」として有名だった女性の伝記、その一方的なイメージを覆す多面的なストーリーと芝居、彼女らにしかできなかった役柄。それだけに、2人の活動がこれからどうなっていくのか、特に21世紀のエンタメ界を牽引するガガが次になにを選ぶのか、注目されるのは当然のことだろう。
ガガの起用しか考えられない『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
そんなガガが出演する『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、今年のヴェネチア国際映画祭でお披露目され絶賛を浴びた。アジテーターの怪物として爆誕したジョーカーを描いた前作は、第92回アカデミー賞においてアメコミ原作の映画としては異例の2部門受賞(主演男優賞と作曲賞)。その続編となる本作は、前作で打ちだされた救いゼロの世界観を皮肉るかのように、多幸感のある音楽がストーリーテリングの重要な鍵となっている。まさにガガの起用しか考えられない作品だ。
文/よしひろまさみち
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