集団戦や一騎討ち、猛獣との死闘など多彩なアクション
剣闘士の物語だけに、激しいアクションも盛り込まれた。剣闘士同士の集団戦やマキシマスと歴戦の勇士との一騎打ち、巨大な虎との死闘、馬車を使ったスピーディなバトルなど、多彩な死闘を展開。剣や槍、矢による痛みを感じるアクションは壮絶の一言だ。
さらにスペクタクルが味わえるのは、ローマ軍とゲルマン族との大がかりな戦い。リアルな映像を求めたスコットは、数千人のエキストラによる肉弾戦に加え、投石器や矢を使うフィジカルな手法で撮影しながらCGでも補強。さらにスコットは『プライベート・ライアン』(98)を参考に撮影スピードや彩度を調整し、ざらついた質感を持つドキュメンタリータッチの映像に仕上げている。大量の火や火薬を操る特殊効果は『プライベート・ライアン』のニール・コーボールドが担当した。主演のラッセル・クロウは役作りのため、ボディビルダーとのトレーニングで体作りをし、スタントマンたちと剣術の訓練を繰り返し、激しいアクションを見事にこなした。
過酷な運命に翻弄されるマキシマスたちの熱いドラマ
本作が時代を超え支持されている理由の一つが、信念に従い生きる熱き人間たちのドラマにある。ローマ帝国を支える武将でありながら権力より家族との穏やかな日々を切望するマキシマス、絶対的な権力者としての父アウレリウスを信奉していたコモドゥス、そしてマキシマスを愛しながら息子ルシアスを守るため実弟コモドゥスの歪んだ愛を受け入れるルッシラ(コニー・ニールセン)。彼ら3人を中心に、復讐と愛憎渦巻く濃厚なドラマが繰り広げられる。
そんな本作の原案・共同脚本を手掛けたのが、スティーヴン・スピルバーグ監督作『アミスタッド』(97)のデイヴィッド・フランゾーニ。ローマの歴史書に触発され剣闘士の物語を思いついたフランゾーニがスピルバーグに持ちかけ、気に入られたことから執筆を開始した。もしかすると、フランゾーニはスピルバーグ監督作を想定して執筆したのかもしれない。物語はフィクションだが、皇帝マルクス・アウレリウスやその息子で皇帝にして剣闘士でもあったルキウス・アウレリウス・コンモドゥス、その姉ルッシラは史実のエピソードからも着想を得ている。主人公マキシマスはコンモドゥスと対立した将軍クラウディウス・ポンペイアヌスやナルキッソスなど、複数の歴史上や神話の人物をヒントに創作された。それら史実と比較してみるのも本作のお楽しみ。また、1964年公開の『ローマ帝国の滅亡』は本作とよく似た構成なので、観比べてみるのもおもしろい。