釜山でファン・ジョンミン、パク・ボヨン、チョン・ウヒが語り尽くす!俳優の濃密なトーク「アクターズハウス」レポート
デビュー20周年。チョン・ウヒが振り返る俳優人生
「アクターズハウス」の最終日を飾ったのは、今年でデビュー20周年となるチョン・ウヒ。自分自身では、20年も演技を続けるとは思ってもみなかったと振り返る。それは彼女の幼い頃の性格にもあるようだ。
「子どもの頃は、両親から『あなたは何がやりたいの?』と言われてしまうほど、何か趣味を持とうとしてもちょっとやったらすぐに気持ちが離れてしまいました。でも、演技だけは不思議なほど魅力的だったんですよね。『これが自分のアイデンティティだ!』というようにシリアスな感じじゃなかったから、20年も続けられたんじゃないでしょうか。でも、スクリーンに登場するごとにこの仕事の意味を考えるようになり、愛着が多くなった今は演技を抜きに私のことを考えられないです」。
そしてチョン・ウヒといえば、彼女の姿が多くの観客の心に刻印された『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』(15)を抜きには語れない。2004年に韓国で起きた女子中学生集団暴行事件をモチーフに、心身に傷を負いながら必死に回復していこうとする高校生ハン・ゴンジュを演じた。性加害のシーンもあり、シビアな撮影だったはずだ。
「私はすべてを受け入れたいと望んでいました。(被害者の)その瞬間、その感情、その状況を完全にありのまま感じたかったんです。ご覧になった方々は『すごく心を痛めてるんじゃないか』と私を本当に心配してくださったんですが、演じている私が心と体に苦痛を感じるのは贅沢ではないかと思いました」と、事件の被害者に寄り添ったことを明かした。
観客からの質疑の時間には、俳優にとって宿命的なスランプについて質問が及んだ。チョン・ウヒは「演技のスランプというのは、本人には上手くやれる能力があるのに、思い通り表現できない時」とし、こう答えた。
「ある停滞を感じた時、撮影現場ではできるだけ色んなことを試して最善を尽くすと思いますが、帰宅して演技を振り返り自分自身を掘り下げてみると、ある瞬間に解決方法が出てくるんです。なので苦痛ではなくて、むしろその痛みが少し楽しい時もあるんじゃないですかね。むしろその苦痛を少しでも感じてこそ、自分が今成長していると実感できる気がします」。
演じるという行為に魅せられ、真摯に向き合うからこそ抱える苦悩と、逆境を跳ねのける信念。韓国の俳優たちの演技が一流である理由を垣間見た夜だった。
取材・文/荒井 南