「自由な表現をしたくて役者の仕事をやっているみたいなところが極論あったりもする」(内野)
——ステキなお話、ありがとうございます。では最後はちょっとポップな質問で。様々な作品でいろいろな時代を生きる役を演じてきているお2人ですが、もし、馬琴、北斎のいる江戸時代に生きるなら、やってみたいこと、見てみたいことはありますか?この時代で役者として生きるお2人も見てみたいです!
役所「僕は、北斎のようにいろいろなところに行きたいかな。お百(馬琴の妻)からも文句を言われずに自由に生きたいです(笑)」
内野「憧れますよね、北斎の生き方」
役所「ましてや北斎はいま、世界中で知らない人はいないくらいの人物。有名な欧米の画家にも影響を与えた作家だから、彼にしか見えない景色を見てきたと思うとますます興味が湧きます。絵描きにも制約があるなかで、いろいろなアプローチをして作品を残してきたという事実がすばらしい。自由っていうのは、ものを作る人間にとってはやっぱり一番羨ましいことですから」
——様々な制約があるなかで作品づくりをされているお2人の言葉なので重みがあります(笑)。
内野「僕は、なんだろうな。歌舞伎役者とかかな。あの時代のアイドルみたいな存在なんですよね、人気のある役者とかって」
——ブロマイドとかもありますしね。
内野「そうそう!あと、北斎自身もそうだけど、絵師という仕事にも確かに興味はありますね。浮世絵とか春画とか」
——春画に魅せられた役もやっていらっしゃいましたね。
内野「ですね(笑)。あの時も思ったけれど、ギリギリの縛りのなかで、自由に表現していることに憧れはあります。あとやっぱり、江戸時代もしかり、時の権力者に縛られているから、八房とか動物になるのもいいのかな(笑)」
役所「お姫様に愛でられて?(笑)」
内野「しかも、生類憐れみの令もあるからさらに愛でられるかな(笑)。でも、やっぱり北斎の姿を見ていると役所さんと同じく、縛られないことに一番憧れます。自分自身もそうだけど、役者として表現するうえで、どれだけ自由になれるのかって結構大きくないですか?」
役所「一番、大きいですね」
内野「ですよね。自由な表現をしたくてこの仕事をやっているみたいなところが極論あったりもする。制約が多いほどそういう気持ちは強くなるのだろうけれど、どの時代で生きても自由でありたいと思うんでしょうね」
役所「どっちにしろ、どの時代も不自由のなかの自由を見つけてやるしかないからね」
内野「そうですよね。っていうか、全然ポップな質問じゃなかったような…(笑)」
取材・文/タナカシノブ