公開から70年が経ったいま、初代『ゴジラ』が与えるモノクロの“恐怖”を考える
ゴジラの死は安らかに
酸素の研究過程で偶然発見した開発した酸素破壊剤を持っている物語の主人公の一人、芹沢博士(平田昭彦)。平和利用できるまで公表しないつもりでいたこの「オキシジェン・デストロイヤー」をゴジラ殲滅のために使えないかと相談を受ける。原水爆に匹敵する恐るべき破壊兵器になり得るものであり、世界の為政者たちが看過しているはずはないと、葛藤する芹沢。
その時、テレビにゴジラによって変わり果てた東京の光景と共に、女子学生らによる「平和への祈り」の斉唱が映し出される。心動かされた芹沢は、今回一回限りの条件で「オキシジェン・デストロイヤー」の使用を承諾し、それに関するすべての資料を焼却することにする。平和のために過ちを犯すこととその葛藤を真摯に描いた名シーンである。
そして、ついに「オキシジェン・デストロイヤー」によるゴジラ殲滅作戦が開始される。自ら起動させるために潜水服を着て海底に潜る芹沢は、静かに「オキシジェン・デストロイヤー」を起動しゴジラの殲滅を成功させる。ゴジラと初めて海中での邂逅を果たすこの殲滅作戦では、とても静かなBGMが使用されている。まるで死にかけの兵士を安楽死させるかのようである。
しかし、ゴジラの苦しみの深さは計り知れないだろう。なにせ、また人類は同じことを繰り返したのだから。「オキシジェン・デストロイヤー」は架空の兵器。水爆を生き延びることのできるゴジラがもし現実に現れた場合、人間にはなすすべもなく蹂躙されるほかないのである。
『ゴジラ対ヘドラ』(71)の坂野義光監督が聞き手を務めた、本多猪四郎監督の晩年のインタビュー記録映像「わが映画人生〜本多猪四郎」では、『ゴジラ』(54)を撮影した際、スタッフ全員が恐怖することを大事にして、そのために妥協を許さなかったと語っている。原爆の怖さを表現し、人類の明確な敵として、そして人類がなにをやっても倒すことのできない存在として描かれた初代ゴジラ。これからもゴジラは姿やキャラクターを変えながらも、最強の怪獣王として君臨し続けてくれるだろう。
70周年を記念した「ゴジラ・フェス2024」が本日開催!
本日11月3日には、「ゴジラ・フェス2024」と第37回東京国際映画祭の提携により、日本初上映となる『ゴジラ 4K デジタルリマスター版』のジャパンプレミアが開催される。「ゴジラ・フェス2024」では、ほかにも完全新撮特撮「フェス・ゴジラ5 怪獣大決戦」の上映や、山崎貴監督が1年ぶりに登場する居酒屋ゴジラなど、見逃せないコンテンツが盛りだくさんとなっている。
また『ゴジラ 4K デジタルリマスター版』は、ゴジラ70周年記念企画としてスタートしたゴジラ・シアターの11月公開作品として上映が決まっている。「週替わりモノクロ祭り」と題して『シン・ゴジラ:オルソ』『ゴジラ-1.0/C』も併せて公開されるので、ぜひこの機会に“モノクロ”で映し出されるゴジラの真価を目撃してほしい。
文/小泉雄也
開催日時:11月3日(日・祝)12:00~
開催会場:日比谷ゴジラスクエア/東京ミッドタウン 日比谷ステップ広場
配信プラットフォーム:YouTube LIVE(Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル)
料金:入場、視聴ともに無料
※詳細は公式サイトをご確認ください。
■ゴジラ・シアター11月ラインナップ
・『シン・ゴジラ:オルソ』
11月1日(金)~11月7日(木)上映
・『ゴジラ 4Kデジタルリマスター版』
11月8日(金)~11月14日(木)上映
・『ゴジラ-1.0/C』
11月15日(金)~11月21日(木)上映
【上映劇場】
東京:TOHO シネマズ日比谷/TOHO シネマズ新宿
宮城:TOHO シネマズ仙台
神奈川:TOHO シネマズ川崎
京都:TOHO シネマズ二条
大阪:TOHO シネマズ梅田
兵庫:TOHO シネマズ西宮 OS
札幌:TOHO シネマズすすきの
愛知:TOHO シネマズ赤池
福岡:TOHO シネマズららぽーと福岡
※上映スケジュールは、各劇場の公式サイトにてご確認ください
【鑑賞料金】
通常料金(一般・シニア):1,300円
ゴジラ学生割引(大学生以下のすべてのお客様):500円