「宇宙戦艦ヤマト」森雪役の麻上洋子、東京国際映画祭で開口一番「古代くん!」ずっと「つながっている」とファンに感謝

「宇宙戦艦ヤマト」森雪役の麻上洋子、東京国際映画祭で開口一番「古代くん!」ずっと「つながっている」とファンに感謝

現在開催中の第37回東京国際映画祭(TIFF)にて11月3日、アニメーション部門作品『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』4Kリマスターの上映が丸の内ピカデリーで行われ、ヒロインの森雪役の声優、麻上洋子がトークショーに出席した。

第37回東京国際映画祭、アニメーション部門作品『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』4Kリマスターのトークショーが行われた
第37回東京国際映画祭、アニメーション部門作品『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』4Kリマスターのトークショーが行われた

本作の舞台となるのは、世界中が放射能に侵され、誰もが絶望の淵にいる西暦2199年。人類に残された最後の希望の艦が、必ず帰還し、赤茶けた地球に元の青さを取り戻すために遥か宇宙の彼方に向け飛び立つ姿を描く。

【写真を見る】笑顔でファンに手を振った「宇宙戦艦ヤマト」森雪役の麻上洋子
【写真を見る】笑顔でファンに手を振った「宇宙戦艦ヤマト」森雪役の麻上洋子

放送50周年を迎えたSFアニメの金字塔「宇宙戦艦ヤマト」で永遠のヒロイン、森雪役を演じた麻上。大きな拍手に包まれながら登場した麻上は、開口一番「古代くん!」と主人公の古代進を口にして会場も大喜び。熱い反応を見渡しながら、「ヤマトを大好きな皆さま、そして森雪を応援してくださる皆さま。私の心の古代くんたち。本当にありがとうございます。初代、森雪のキャラクターボイス、麻上洋子です」とやわらかな笑顔で自己紹介した。

原点やキャリアについて明かした
原点やキャリアについて明かした

麻上は、「宇宙戦艦ヤマト」の放送が始まる前年である1973年にアニメ「ゼロテスター」でデビューした。「声優に憧れて、声優になった最初の世代」と称されることも多いが、幼いころからアニメが大好きで『鉄腕アトム』や『ムーミン』を夢中になって観ていたという。アニメを観ながら「これは人間が声を当てているんだと思って。(アトム役の)清水マリさんに会ってみたいとずっと思っていました。私もこのお仕事をすれば会えるんだ、やりたいと思っていました」と夢を抱きつつ、「ちょうど高校を卒業した年に、私の師匠である黒沢良さんが日本で初めて声優のための養成学校を作ってくれました。その学校の一期生、初めての卒業生です」と回想。さらに「卒業してすぐに『ゼロテスター』という作品で、リサ役をいただきました」とキャリアのスタート地点を振り返り、「そのスタジオとは違うスタジオのドアから出てきたのが、清水マリさん。それが50年前です」と憧れの人との出会いをうれしそうに話していた。

オーディションを回想
オーディションを回想

森雪役には、オーディションで抜擢されたという。「青山のアバコスタジオという古い、小さなスタジオに入っていくと、テーブルに森雪のセリフと絵が置いてあって。名前、役名、このセリフを言ってください」というオーディションを経て、見事合格。「アニメのキャラクターの声をやりたい、それも主役をやりたいと思っていたので、とてもうれしかったです」と感激したとのこと。


ベテラン、しかも男性キャストばかりのアフレコ現場では緊張しきりだったそうで、「のちのちに永井一郎さんから『洋子はいつも座ることもできず、壁にへばりついて先輩のことをずっと見ていたよね』と言われました。マイクの前に行って、セリフを言って、座ればいいのにビクビクして壁にへばりついていたと(笑)。座って椅子の音が鳴ってしまうのも申し訳なくて、音がしないように密かにしていました」と目尻を下げ、そんな時にはいつも古代進役の富山敬が「ここ空いているよ。座りなさい」と声をかけてくれたと感謝していた。

「森雪を演じるうえで大事にしていたことは?」と聞かれると、「いまの私が感じる想いを乗せれば、いまの声でいいと思いました」と麻上。「演出家の田代さんが『そのままやってくれればいい。そのまま、作らないのがとてもいい』と言ってくださった。勇気を持ってそれを通しました」と明かす。等身大の想いを乗せた結果、森雪は愛され続けるキャラクターとなり、ファンからはたくさんの手紙が届いたとニッコリ。

現在は一龍斎春水として講談師としても活躍している麻上だが、「50年経って、そういう方たちが講談の講座に来てくださる。『お手紙を出して、お返事をいただきました』と言ってくださるんです。ちゃんとやっていたんだという自分を褒めるような想い。応援していただくことがありがたかったです」としみじみと語った。

東京国際映画祭に登場した森雪役の声優、麻上洋子
東京国際映画祭に登場した森雪役の声優、麻上洋子

「宇宙戦艦ヤマト」の人気の秘訣について、麻上は「あのようなアニメをみんなが待っていたんだと思います」と分析。自身がアニメが大好きで声優になったように、現場は「アニメが大好きで、好きなアニメを作ろうというパワーがものすごくあった」と熱気に満ちていたという。麻上にとって森雪は「大きな存在」だと改めてその存在を噛み締め、「私は本当に恵まれていて、すごくいい作品に出会わせていただいた。芝居が好きで、個性のある大勢の先輩がいた。そのお芝居の濃さが、当時のアニメを深く、大きなものにしているんだと、このごろ本当に深く感じています。そのスタジオにいられたことは、私にとってもとても大きなことです」と力強い作品を、情熱と心を込めて生みだしていた先輩たちに敬意を表していた。

会場のファンも手を振り、麻上も「うれしい。ありがとう!」と遠くまで届くように大きく手を振り返していたこの日。「X(旧ツイッター)をやっていると、皆さんが返事を書いてくれたり、いいねをしてくださる。ずっと繋がっているんだという気持ちにさせていただける。もうちょっと生きていようと思いました」とファンに愛情を傾けながら目尻を下げた麻上は、「あちらに行っちゃった人も多いけれど、まだまだみんな頑張っています。新しい『ヤマト』もある。またいつか新しい『ヤマト』でなにかでふっと声を出すことができたらうれしいなと思います。これからもずっとヤマトを応援する気持ちを持ち続けていただきたいと思っています」とメッセージを送り、大きな拍手を浴びていた。

取材・文/成田おり枝

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