エレンたち、幼なじみ3人組の視点からシリーズを振り返る!『劇場版「進撃の巨人」完結編』で描かれたそれぞれの選択と結末

コラム

エレンたち、幼なじみ3人組の視点からシリーズを振り返る!『劇場版「進撃の巨人」完結編』で描かれたそれぞれの選択と結末

エレンを求める一心で戦うミカサの愛

「オレはずっと、お前が嫌いだった」――エレンからそう告げられたミカサ。エレンを好きな気持ちはアッカーマンの血のせい、幼少期から頻繁に起きる頭痛は命令に逆らう本能のせいだとエレンに強く言われて憔悴してしまう。自分の心がわからなくなったミカサは、一度は大切にしていたマフラーを置いて戦闘に出るが、アルミンに「どうしたい?」と問われ、「遠くに行ったエレンを、連れ戻したい」という気持ちを吐露。再びエレンが巻いてくれたマフラーを手にし、地鳴らしを止めるために出発する。

エレンの言葉によって自分の心がわからなくなってしまったミカサ
エレンの言葉によって自分の心がわからなくなってしまったミカサ[c]諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

思い返せば、ミカサの戦いは最初から“エレンを守る”ためだった。幼いころに強盗犯を殺したときからずっと…。“守るもの”がある人間は強い。苛烈極まる天と地の戦いの中で、エレンを求める一心で戦うミカサ。その姿を、彼女の選択を見届けた瞬間、2000年間妄執のような己の愛に囚われていたユミルは、何を思うのか?

エレンが巻いてくれたマフラーは本作でも重要なアイテム
エレンが巻いてくれたマフラーは本作でも重要なアイテム[c]諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

ずっと想っていたのに、いざとなったらなにも言えない奥ゆかしいミカサの愛は、エンディングに流れる石川由依が歌う「二千年...若しくは...二万年後の君へ…」に織り込まれている。劇場版はオープニングがない。劇伴もハンジの死以外、不思議なほど印象に残ることなく、鳴りを潜めていた。だからなのか、「二千年...若しくは...二万年後の君へ…」がより胸に迫る。

そして、同時にスクリーンに映し出される、呆れるほど学習しない人類の所業を見ながら、11年間「進撃の巨人」を追ってきた過去をぼんやりと思い返した。冒頭のマーレの港シーンを見た瞬間、ちょうど1年前の2023年11月5〜8日にオンラインで開催された、「TV アニメ放送完結記念『進撃の巨人』ワールドワイド・アフターパーティー」で楽しんでいた気分を思い出したときとは真逆の、虚脱感。そして、現実に戦争が起きている世界で、お前はなにをするのかと問われているような感覚。そしてたぶん、自分にはなにもできないという諦め、失望。そんなふうに思いを巡らせていうちにEDが終わり、劇場版で新たに追加されたポストクレジットシーンが流れ、まるで自分の心を見透かされたようで驚いた。


劇場版で新たに追加されたポストクレジットシーンは必見!
劇場版で新たに追加されたポストクレジットシーンは必見![c]諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

登場したのは、本作を見終わったばかりのエレンとアルミン、そしてミカサ。興奮した様子で考察する陰キャオタクのアルミン、そんなアルミンと言い争いを始めるゴスロリミカサ。そして「お前らと観れてよかった」と笑うエレン。この映画の余韻を逆の意味で吹き飛ばすインパクトのおかげで、多くの人がきっと、長い夢から目が覚めるだろう。人は忘れる生き物だからこそ、未来に向かって進めるのだから。

ついに完結を迎えた「進撃の巨人」を劇場で味わい尽くそう!
ついに完結を迎えた「進撃の巨人」を劇場で味わい尽くそう![c]諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

※朴ロ美の「ロ」は「王へんに路」が正式表記

文/ナカムラミナコ

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