「私自身、勇気をもらった映画です」
ブレイク・ライブリーの出世作である「ゴシップガール」が大好きで「よく観ていた」という犬山だが、「ブレイク・ライブリーさんがすばらしい演技をされていました。リリーが立ち上がっていく時の、瞳の力強さは忘れられません」としみじみ。
「リリーはつらい想いをしたけれど、彼女の人生は汚れてなんていない。人はいつでも立ち上がれるし、やり直せるし、希望を持つことができる。ライブリーさんのお芝居からも、そういったことを感じました」と称えつつ、「リリーがとてもファッショナブルで、自立した女性として描かれている点にも惹かれました」と衣装にも魅了された様子。本作の衣装デザインは、ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」のエミー賞受賞デザインチームの一員でもあり、「ゴシップガール」の衣装デザインも手掛けていたエリック・ダマンが担当している。「成熟していて、こんなにもしゃんとした女性がDVを受けるなんて、と感じる人も多いと思います。リリーを弱々しく、保守的な女性として描くのではなく、誰でもこういった状況に陥る可能性があるんだということが、彼女のスタイリングからも伝わってくるようでした」。
映画の隅々にわたって、制作陣の誠実さを感じたという犬山。彼女自身、著書「女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから」では、女性が自尊心を持って生きていくための知恵を専門家と一緒に考えながら1冊の書籍にしているが、女性に勇気を与えるような映画を作り上げた制作陣に共鳴する点もたくさんあったと話す。
「本作を観ていると『愛する人からの暴力に苦しんでいる人を1人でも減らしたい、救いたい』という、制作陣の方々からの強烈なメッセージを感じました。恋愛ストーリーというだけではなく、その先に映画の力を使って、社会に対して投げかけたい想いがしっかりとある」と敬意を表しながら、「私自身、年齢を重ねれば重ねるほど、若い世代の女の子たちが理不尽な思いをしてほしくないという想いが強くなっています。それは年下の女性だけに限らず、年上の女性、男性に対しても言えることですが、誰もが性被害など痛みを感じながら生きてほしくない。いまの社会にはままならないこともたくさんあるけれど、メッセージ性のある作品を送りだそうとしている人たちの気概に触れると、なんだか私も癒されるようなところがあって。みんなで苦しんでいる人を守ろうとしたり、そういった人を生みださないように知恵を絞っている。1人じゃないんだと、勇気をもらいました」とやわらかな笑顔を見せる。
また「女性はもちろん、男性にも観てほしい映画だと思いました。男性も被害に逢うことも、もちろんありますから。全員に観てほしい」と声を大にした犬山は、「私は自分の娘に対して、『あなたの心と体を大事にしてね。あなたは大事にされて当たり前、愛されて当たり前で、スペシャルなんだよ』と伝え続けたいと思っています。自分、そして他者も尊重する精神を伝えていけば、『この人は、イヤだと言ってもやめてくれない。私のことを大事にしてくれない人なのかな』という相手に遭遇した時にピンとアンテナが立つこともあると思います。それは会話を繰り返しながら育っていくものだと思いますが、本作のような映画を観て、登場人物に感情移入しながら、心と体を守ることの大切さを教えるのも一つの手段だなと感じます」と娘を育てる母としての想いをあふれさせつつ、「愛する人からの暴力とは一体どういうものなのか?ということに対して、理解を深められる映画。すべては知ることから始まるものなので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいなと思いました。『どこからが暴力?』と思った時に、リリーがライルに放つものでとても腑に落ちる言葉がありました。リリーの決断と共に、その言葉にも注目です」とクライマックスは発見と感動の詰まったものだと語っていた。
取材・文/成田おり枝
■犬山紙子
1981年、大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。2011年に出版した女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで描いたブログ本が注目され、現在はテレビ、ラジオ、雑誌など幅広く活躍中。 2014年に結婚、2017年に第一子となる長女を出産してから、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」の立ち上げ、社会的養護を必要とするこどもたちにクラウドファンディングで支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。女の子を育てるうえで大切にしたいことにフィーチャーする最新刊「女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから」が発売中。