批評家が選ぶ、ニコラス・ケイジの代表作ランキング!個性派スターの紆余曲折のキャリアを振り返る“フレッシュ”10選

コラム

批評家が選ぶ、ニコラス・ケイジの代表作ランキング!個性派スターの紆余曲折のキャリアを振り返る“フレッシュ”10選

87%フレッシュの作品が同率で並んだため11作品を選ぶことになったが、先述した通り出演映画は110本以上。約40年のキャリアで、この10倍以上の作品に出ていると考えれば、これでも少ないぐらいだ。そのなかで最も高い評価を獲得しているのが、少々意外なタイトルというの点は実に興味深い。1993年に出演したジョン・ダール監督の『レッド・ロック 裏切りの銃弾』が98%フレッシュという一枚抜けた評価となっている。

殺し屋に間違われる青年を演じた『レッドロック 裏切りの銃弾』
殺し屋に間違われる青年を演じた『レッドロック 裏切りの銃弾』[c]Everett Collection/AFLO

デニス・ホッパーや「ツイン・ピークス」シリーズのララ・フリン・ボイルと共演した同作は、仕事を求めてテキサスからワイオミングの田舎町にやってきた青年マイケルが、殺し屋と間違えられて保安官から妻殺しを依頼される。安易に引き受けてしまいターゲットに接触すると、今度は彼女から夫殺しを依頼されてしまう。金だけもらってズラかろうとした矢先、本物の殺し屋が現れるという、巻き込まれサスペンスの傑作だ。

1980年代前半にキャリアをスタートさせ、91%フレッシュを獲得したコーエン兄弟の『赤ちゃん泥棒』と89%フレッシュを獲得したノーマン・ジュイソン監督の『月の輝く夜に』で一気にその実力が認められたケイジ。この『レッド・ロック』という作品は、まさに上昇気流に乗っている時期の出演作といえよう。そしてこの2年後、91%フレッシュの『リービング・ラスベガス』でアルコール依存症の男が抱える孤独を見事に体現してオスカー俳優となり、さらなる快進撃が幕を開けるのである。

1990年代後半にはアクション大作で大活躍!
1990年代後半にはアクション大作で大活躍![c]Everett Collection/AFLO

『ザ・ロック』(96)と『コン・エアー』(97)、そして93%フレッシュの高評価を獲得している『フェイス/オフ』と、3作続けて出演した大作映画が興行的に大成功。『リービング・ラスベガス』で勝ち取った演技派俳優としての地位と、ドル箱スターとしての地位の両方をほしいままにしただけでなく、『スネーク・アイズ』(98)ではブライアン・デ・パルマ監督、『救命士』(99)ではマーティン・スコセッシ監督と、錚々たる監督たちに愛されたのもこの時期だ。

不遇な脚本家とその双子の弟を一人二役で演じた『アダプテーション』は、90%フレッシュを獲得しているように作品としても魅力的であり、同時にケイジの役者としての力量の高さも存分に味わえる一本だ。そしてその翌年に出演したリドリー・スコット監督の『マッチスティック・メン』(03)もついつい見落とされがちな作品ではあるが必見。しかしこのころから急激にキャリアが行き詰まり、主演を務めた大作映画の興行的な失敗が続き、“最低”の映画を決めるゴールデン・ラズベリー賞の常連俳優とまでなってしまう。

『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』はベルギーのバイオレンススリラー
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』はベルギーのバイオレンススリラー[c]Everett Collection/AFLO

2010年代に入ると突然大量の作品に出演するようになったのは、長年の浪費癖がたたって借金が膨れ上がり、その返済にあてるために作品を選ばなくなったから。その多くがインディペンデント系のジャンル映画であり、大半の作品で主演を張っているのだから流石である。しかもそんな時期の出演作でも、87%フレッシュを獲得した『グランド・ジョー』や90%フレッシュの『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のように高評価作品があるのだから侮れない。


そんな十数年が良きカンフル剤となったのか、借金返済後に2度目の黄金期に突入したケイジ。愛豚が誘拐されてしまったトリュフハンターを演じた『PIG/ピッグ』は、97%フレッシュという高評価に加え、ケイジのキャリア随一の名演と大絶賛を獲得。さらに87%フレッシュの『マッシブ・タレント』に、91%フレッシュの『ドリーム・シナリオ』と、ここにきて高評価を連発。プライベートでも5度目の結婚をするなどまさに順風満帆だ。

2021年には5度目の結婚!公私共に順調
2021年には5度目の結婚!公私共に順調[c]Everett Collection/AFLO

どん底から見事に這い上がった唯一無二の個性派スターはまだ60歳。一時期に比べると出演作は減少傾向にあるが、それでも2025年にもすでに3本が北米で公開待機。今後さらなる躍進を見せてくれることだろう。


文/久保田 和馬

※各作品のスコアは2024年11月21日時点のもの
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