名ヴィランを演じてきたマッツ・ミケルセン、『ライオン・キング:ムファサ』キロス役を分析「いい王様になれたかもしれない」
「大きな喪失を経験したキロスの内面には共感できる」
『ドクター・ストレンジ』(16)のカエシリウスしかり、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(22)のグリンデルバルドしかり、ミケルセンが演じる悪役にはどこか人間味があり、複雑なバックグラウンドも抱えているなど共感できるところがおもしろい。だからこそ、世界中で多くの熱狂的な支持を集めているのだろう。そういった要素は今回のキロス役にも当てはまる。
他者を恐怖で縛り付け、ある因縁からムファサたちを執拗に追い続けるキロス。しかし彼には、かつて仲間から迫害され、はぐれ者となり、同じような境遇のライオンを集めて自身を頂点とする独自のコミュニティを形成していったという経緯がある。このようなキロスのキャラクターをどのように捉えているのだろうか?
「キロスは大きな喪失を経験していて、生涯はぐれ者でした。一方で、どこかに帰属したいという欲求もあります。やり方には問題があるんですけどね。でも、そういった彼の内面には共感できますよね。キロスが求めているのは忠義なのですが、誰かを愛することを知らずに生きて来たので、強引な方法でそれを求めてしまう。そこが一番の弱みでもありますね。彼の人生に少しでも愛があれば、いい王様になれたのかもしれないのに。でも、こういう複雑さがストーリーに溶け込んでいるからこそ、観客に愛される作品になっていくのだと思います」。愛を求めているにもかかわらず、独善的に攻撃を繰り返してしまう矛盾。過去を想像し、内に抱える弱さを掘り下げ、様々な解釈ができるところもキロスを魅力的なキャラクターたらしめている。
ムファサとタカ、兄弟となった2人の物語が軸となる本作。ミケルセンにも「スター・ウォーズ:アソーカ」のスローン大提督役などで知られる一つ年長の兄、ラース・ミケルセンがいるので、お兄さんのことは意識したか?と問いかけてみたところ、「ノー!いやいや、ないね(笑)」と笑顔を見せ、そこは否定。
そのうえで、「ムファサとタカほどドラマチックな関係性じゃないですからね。この作品は2人のブラザーシップが中心になっていて、そこからヒロイズムだったり、臆病さだったり、いろんな感情が導きだされていくんです」と説明し、ムファサとタカの関係性は強く興味を引かれるものだったことを明かしてくれた。