イメージだけ毛嫌いしないで!抱腹絶倒コメディ『ヘヴィ・トリップ』などエクストリームだけど良作ぞろいのメタルムービー5選
実在するバンドの狂乱の青春を描いた『ロード・オブ・カオス』
同じく実在するメタルバンドを扱った作品として取り上げたいのが『ロード・オブ・カオス』(18)。ブラックメタルシーンの黎明期に人気を築いたノルウェーのバンド、メイヘムを題材に、世間に衝撃をもたらした彼らの暗黒史が虚実を織り交ぜながら描かれていく。ブラックメタルバンドの元祖として知られるバソリーの元ドラマー、ヨナス・アカーランド監督がメガホンを握っている。
1987年、ギタリストのユーロニモス(ロリー・カルキン)は、真のメタルバンドを追求し、ボーカルのデッド(ジャック・キルマー)らと共にメイヘムでの活動に熱を上げていた。ライブ中にデッドが自らの身体を切り刻む過激なパフォーマンスが受け、熱狂的な支持を集めるようになっていくメイヘムだが、ある日、デッドがショットガンで頭をぶっ放し自殺してしまう。その現場を写真に収め、アルバムジャケットにしたことでカリスマとして祭り上げられたユーロニモスは、インナーサークルを作り、“誰が最も邪悪か”を競い合うようになるが、バンドメンバーのヴァーグ(エモリー・コーエン)の教会放火を機に歯止めが効かなくなってしまい…。
当時のブラックメタルのシーンで起きた事件を扱う本作だが、描かれているのは世界のどこでも行われているような男たちのマウンティング争い。些細なことが手に負えないカオスへと発展してしまう、邪悪だがどこかせつない手触りもあり、狂乱の青春映画として楽しめる1作だ。
メタリカにも影響!架空のバンドを追った『スパイナル・タップ』
一方、架空のバンドにカメラを向けた作品が『スパイナル・タップ』(84)。『スタンド・バイ・ミー』(86)のロブ・ライナーの初監督作で、大御所ヘヴィメタルバンド、スパイナル・タップの再起を懸けた全米ツアーに密着したモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)スタイルのコメディだ。
カルト的人気を誇る本作は、ボーカルとギタリストの不仲や次々と交代するドラマー、ギタリストの音の大きさへのこだわりなど、音楽好きなら思わず笑ってしまうようなヘヴィーメタル、ハードロックバンドの“あるある”をパロったネタが満載。
劇中でスパイナル・タップがリリースするアルバムのジャケットがエロすぎて、レコード会社に真っ黒にされてしまうという、ロックバンドにありがちな黒ジャケットをいじったネタが登場するが、メタリカの“ブラックアルバム”こと「Metallica」は本作のオマージュ。後世へ多大な影響を残した、実は重要な1作だ。
なお、スパイナル・タップは全員が楽器を演奏でき、実際に映画の公開後にはアルバムを幾度もリリースしているため、ある意味では実在のバンドとも言える。