細田守監督最新作『果てしなきスカーレット』2025年冬公開が決定!製作発表会見で「これまでで一番大きなテーマに挑む」と意気込み
12月23日、『時をかける少女』(06)や『サマーウォーズ』(09)、『竜とそばかすの姫』(21)などで知られる細田守監督による最新作の製作が発表され、会見に細田監督とスタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーが出席。『果てしなきスカーレット』というタイトルで、2025年冬に東宝/ソニー・ピクチャーズの全世界配給によって公開となることが発表された。
この日は、1枚の“スーパーティザービジュアル”がお披露目となった。混沌とした地に、力強い眼差しをした女性が佇んだ1枚だ。『時をかける少女』から19年、時空を超える強き王女(ヒロイン)が誕生するという。前作となる『竜とそばかすの姫』は66億円という細田監督作品史上最高の興行収入を記録したが、スタジオ地図の齋藤プロデューサーは、「『竜とそばかすの姫』の公開時はコロナ禍、緊急事態宣言中という厳しい環境のなか、66億円という興行成績を記録した。他の国でも多くの人々に観ていただけた。現代性のなかで希望をずっと描き続けてきたからこそ、たくさんの方に観ていただいてきた作家」だと改めて細田監督作品の魅力を実感しつつ、世界でも受け入れられた同作について振り返った。
『果てしなきスカーレット』は、当初から日本だけではなく、全世界に向けた人々に送る作品として企画されたとのこと。細田監督からアイデアを受け取った齋藤プロデューサーは「世界中で社会現象が巻き起こるんじゃないか、大変な作品になるのではないか」と期待を膨らませたそうで、「この力強い、大きな作品、新しいチャレンジに満ち溢れた作品をグローバルに届けるために、まだ日本映画がやっていない、日本と世界が手を取り合う新しい仕組みが必要だと思った」と意気込んだと回想。悪戦苦闘を重ねるなか、ハリウッドメジャーであるソニー・ピクチャーズから「ぜひ一緒に作りたい」と熱烈オファーがあり、ソニー・ピクチャーズとのタッグが実現。日本の配給は東宝が行い、それ以外の国と地域はソニー・ピクチャーズが配給、出資も担うなど、本作のために新たなビジネススキームを構築したと話した。
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのインターナショナルディストリビューション プレジデントから「全世界に向けた物語を作れるという無限の可能性を楽しみにしています」「あっという間に公開を迎えると思います」とメッセージが到着する場面もあり、細田監督は「もうすぐだと言われて、間に合うのかと(苦笑)。ドキドキしていますが、励ましてもらったと思って頑張って作っていきたいと思います」と奮起。お披露目となったビジュアルを示しながら、「いままで爽やかな映画が公開されてきたので、それとは毛色の違う画面だと感じられるかもしれません。現実ではないような、厳しそうな世界から希望の光を見ているようなひとりの女性の姿が描かれています。これがスカーレットという女性です。肌も汚れて、服もボロボロ。マントを背負って剣を携えている」と紹介。「とある国の王女が、厳しい世界を旅する。旅をしながらアクションもあり、ロマンス的なものもあり、皆さんに楽しんでもらえるようなエンタメ作品。ワクワクするような映画の魅力を持った作品にしたいと志を持ってやっているところです」と本作に込めた想いを口にした。
「常にチャレンジを続けてきた」と情熱を注ぎながら、作品に向き合ってきた細田監督。「セルアニメでもない。かといってハリウッド的なCGアニメ的なことではない。まったく新しいルックで、アニメーションの可能性を広げていきたい。フランスだと『アーケイン』も新しいことをしているし、ソニー・ピクチャーズの『スパイダーマン:スパイダーバース』など、新しいアニメーションの表現が模索されている」と世界中で技術的にも新たな表現に挑むアニメーションが登場するなか、表現としても新しく、高度なものを目指していきたいと力を込めていた。
細田監督が「生と死にも踏み込んだようなテーマを扱っている。いままでのなかでも一番大きなテーマ」に挑んでいると語る本作は、ストーリーはまだ詳しく明かせないとしつつも、主人公は「おそらくこれまでのなかでも最も困難な、ハードな、生やさしいものではない条件のなかで冒険をしていく」という。さらに『竜とそばかすの姫』が「美女と野獣」をモチーフとしていたように、本作も「とある非常に有名な古典をベースにしている」と告白。「古典をベースにしながら、それにとどまらない。時空を超えた作品になる」、「スカーレットだけではなく、もうひとりの人物と一緒に旅をする。絆が深く描かれる。バディもの形式で対照的な2人が旅をして、理解していく」と少しずつヒントを語りながら、「生きづらい世の中、先行きが見えない社会の状況のなかで、それでも前を見たり、希望を見出す人物というのは、どういう人だろうと考えながら作っている。若い人が未来を切り開いて、強く前を向いて生きてほしいなという気持ちを込めている」と吐露していた。
普遍的で、いまを生きる世界中の人々の胸を打つ作品を目指しながら、アニメーションの新たな可能性に立ち向かっている。これまでは夏に公開されてきた細田作品だが、本作は冬に公開を迎える。細田監督は「これまでは夏の日本を舞台にしてきましたが、今回はそうではない。日本人ではない主人公で、決して平坦ではない世界で生きているような人。さわかやな入道雲などはないと思うんですが、最終的にいいところに着地する物語だと思っている。ぜひ期待していただけたら」と呼びかけていた。
取材・文/成田おり枝