「海が走るエンドロール」たらちねジョンも驚愕!「ロード・オブ・ザ・リング」最新作におけるアニメーションの精巧さとシリーズとのつながり
「『ロード・オブ・ザ・リング』の設定が細かいところまで意識されている」
劇中には、『二つの塔』にも登場したローハンの王都エドラスに建つメドゥセルドの黄金館、角笛城といった建造物も登場。紛れもなく同じ「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観を共有した作品になっている。今回の取材に際して、三部作も改めて観返したというたらちねも、そういったシリーズとのつながりを感じたようだ。「『ローハンの戦い』では、冒頭から三部作でも活躍した大鷲が登場しますし、ローハンの建物の屋根や柱に施された馬の形をした装飾も、実写版と同じようにきちんと再現されていて、シリーズの設定を細かいところまで意識されているなと感じました」と振り返っている。
本作のために三部作の撮影で使用された兜や鎧、剣などの武具が取り寄せられ、忠実に描かれたうえで劇中に登場しているという。このような線の多いアイテムをアニメーションにするのは難しい作業であり、さらに登場人物が身に着けて動くとなればその労力は相当なものだ。「もし、自分が描くなら?という視点でも観ていたのですが、兜を被ったキャラクターが頭を動かしたり、斜め上の構図から映したりしてもパースはまったく狂っていなかったので、そこに感動してしまいました。あと、人物と背景との整合性が常に取られているのもすごいですよね。ヘラが大鷲に肉の塊を投げ与えるシーンがあるのですが、馬に乗って丘を駆け上っていくところから、カメラは動いているのにやはりパースは狂っていなくてスムーズだったので、スクリーンに集中することができました」。
続けて、美術の精巧さにも言及。「冬が到来して以降のシーンでは、吹雪による寒さがすごく真に迫って来ました。城門が凍りついて開かないという描写では特に説明的なセリフやアクションはありませんが、画だけでそれがわかるようになっていましたね。血の付いた壁とか、画を通してそこでなにが起きたかを想像させる真実味がありましたし、単調な場面が一つもなくて、美術背景におけるこだわりにただただ圧倒されてしまいました」。
「呼吸に合わせて体が小刻みに動き、血の通った人間であることが伝わってきた」
たらちねも実写と見間違ってしまったほど美しい中つ国の自然豊かな景色、何千騎もの騎馬隊による壮絶な合戦、建造物や武具にいたるまで、3DCG全盛の時代にあって本作が手描きのアニメーションで制作されていることには驚かされる。俳優の動きをモーションキャプチャーで収録したものを基に、3Dキャラクターのアニメーションを制作。さらにそれをベースに手描きで作画するという手法が取られているが、漫画家であるたらちねから見ても、この途方もない作業で生みだされたアニメーションは画期的に映ったようだ。「ヘルムとフレカが決闘することになるシーンで、ただ言葉を交わしているだけなのにキャラクターがずっと動いていたのがすごかったです。つまり、呼吸に合わせて体が小刻みに動く様子も丁寧に描写されているので、血の通った人間であることがちゃんと伝わってきました」。