「飯沼一家に謝罪します」は「幸せになりたかった人たちの顛末」。皆口大地&近藤亮太が明かす「TXQ FICTION」秘話

インタビュー

「飯沼一家に謝罪します」は「幸せになりたかった人たちの顛末」。皆口大地&近藤亮太が明かす「TXQ FICTION」秘話

「“公開捜索番組”という枷をなくしたことで、物語が良くなっている側面も多い」(近藤)

近藤亮太監督
近藤亮太監督撮影/友野雄

――「イシナガキクエ」からブラッシュアップした点や、反省点を反映したという部分はあったのでしょうか。

近藤「『イシナガキクエ』の場合は“公開捜索番組”というフォーマットにものすごく大きなパワーがあって、そういうテレビ番組に擬態する形式は結構やり切ったよね、という実感はありました」

皆口「メンバー内では『イシナガキクエ』の反省会のようなトークも繰り広げられていたのですが、ちょっと自分は不満なんですよね(笑)。自分は『イシナガキクエ』には満足していたので、踏まえるというよりもまったく違うものを作ろうという気持ちでした」

近藤「前回は、公開捜索番組という形式をとっている以上、物語を進めていくために本来必要な情報を出せないことがある…というフォーマット上の難しさがありました。例えば、生放送で個人情報を流すのは現実ならありえないよねとか。枷がなくなったという意味で、物語としては良くなっている側面も多いと感じます。ですが、『イシナガキクエ』のフォーマットが好きだったという人がいるのもうなづけます」

皆口「まさに自分は、個人的な好みで言ったら『イシナガキクエ』の方が好きなんです。でも作品の仕上がりで言うと『飯沼一家』はピカイチだと思うし、“おもしろい”という手応えがありました」

「たとえ『幸せ』という言葉が腐ったとしても、『幸せ』という文字は変わらない」(皆口)

皆口大地
皆口大地撮影/友野雄

――制作発表時にみなさんが出していたコメントについて伺います。近藤監督は「『罪』とは『正しくない行いをした結果として、問題にされるもの』だそうです。ぜひ、何が正しくなかったのか、を見届けてください」と書かれていましたね。

皆口「広辞苑か!(笑)」

近藤「僕がコメントを書く時にはほかの3人のものはすでにあって、最後だったのできつい“大喜利”でした(笑)。ですから、まさに辞書を引いて書いたんです。ラストまで見届けていただければ、誰が誰に対して謝らないといけない話だったのかというのはもっと明確になるはずです」

皆口「結果的に、作品を見る時のガイドになるようなコメントでしたね」

――皆口さんのコメントは「新作はある家族の幸せがテーマです。ハートフルな物語が完成しました」ということでしたが、ここでいう“ハートフル”とはどのような意味でしょうか。

皆口「多少ひねくれた表現にはなっているかもしれないですけれど、この物語は幸せになりたかった人たちの顛末だと思っています。例えとして適当かわかりませんが、『みかん』って、腐っても『みかん』じゃないですか?だから『幸せ』という言葉が腐ったとしても、『幸せ』という文字は変わらないみたいな、皮肉めいたものを感じていました。自分は周りにあまり期待しないタイプの人間なんですけど、未来に期待しすぎると、傷ついたり、がっかりしたりすることがありますよね。今回はその究極というか、もっとも嫌な展開になってしまったというような物語だし、切なさも感じるのではないかと思います。第4話の終わり方も悲しくて、怖くて、お気に入りなんですよね。感情にあふれているという意味ではハートフルと言えるのではないでしょうか」

「飯沼一家に謝罪します」より
「飯沼一家に謝罪します」より[c]テレビ東京

――制作を終えて、「飯沼一家」の結末についてはどう感じていらっしゃいますか。

皆口「自分としては終わり方はめちゃくちゃ良いと思っているんですが、全然すっきりしないですよね。投げた謎はちゃんと全部回収しているはずですが、知らなきゃよかったなみたいな情報も出しているので、悶々とするかもしれません。自分は性格が悪いので、一人でも多くの人が、『飯沼一家』を見て暗い気持ちになってくれればいいなって思います」

近藤「人が幸せになるために排除しなきゃいけない他人の幸せというのが存在し得るという話と人の不幸がないと幸せにはなれないみたいな話が、双方に入り交じるので、そういう意味でモヤモヤするというのは間違いないと思います。モヤモヤしつつも楽しく観終わってくれればいいなと」

――とにかく『飯沼一家』は、全体的な情報量とスピード感がすごかったですね。

皆口「そうですよね。前回の『イシナガキクエ』は各話ごとに1週間やそれ以上のスパンがありましたけど、4夜連続で良かったと思います。一気見してほしい作品です」

近藤「自分たちもちょっと混乱するぐらい構成が複雑で、“番組内番組内番組”…みたいな、入れ子構造で、言ってみれば『インセプション』みたいなことが起きているので(笑)。キャラクターも多くて複雑な話に仕上がったのはかなりおもしろいと思っています。フィクションかどうなのかもはや境界線がわからなくなるぐらいの情報量だと思うので、どんどん話が進んでいく“ドライブ感”みたいなものを楽しんでほしいなと思いますね」

取材に応じてくれた、(左より)寺内康太郎、大森時生、皆口大地、近藤亮太の「TXQ」チーム4名
取材に応じてくれた、(左より)寺内康太郎、大森時生、皆口大地、近藤亮太の「TXQ」チーム4名撮影/友野雄


取材・文/小泉雄也

「TXQ FICTION/飯沼一家に謝罪します」(1)~(4)は、TVerにて配信中。
https://tver.jp/series/srog0v9atu

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